公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
microRNA (miRNA) はわずか22塩基程度の小さなnon-cording RNAで、標的mRNAの3’UTR非翻訳領域に結合してタンパク質発現を翻訳レベルで調節する。miRNAは、発生・分化・アポトーシス・脂質代謝・ウイルス感染・がんなどの重要な生命現象に関与していることが報告されているほか、細胞の運命を制御している。本研究は、造血幹細胞の分化に重要なmiRNAを同定することを目標に、DicerのコンディショナルノックアウトマウスとTie2-Creマウスを交配さたマウス(Dicert CKO)をもちいて解析を進めてきた。Dicer DKOマウスは、胎生14.5日前後に胎生致死となる。そこで、胎生11.5日前後の、血管内皮細胞から造血幹細胞が出芽する時期の大動脈を摘出し、miRNAアレイ解析を行った。血管内皮細胞をコントロールとして、発現が変動したmiRNA群の標的mRNAおよび発現について検討を行った。Dicer DKOマウス胚は、血管新生に対する異常が見られなかった。しかしながら胎生13.5日前後の胎仔において、背側に浮腫が確認できた。この以上は、リンパ管新生が異常なマウスで見られる表現型であったために、Dicer/miRNAシグナルがリンパ管新生にも関与する可能性について検討を行った。胎生11.5日のDicer CKOマウス胚の凍結切片を作製し、リンパ管のマーカーであるLYVE-1と、血管内皮細胞のマーカーであるPECAM-1 により染色を行ったところ、血管構造に異常は見られなかったが、リンパ管内皮細胞が劇的に減少していた。
2: おおむね順調に進展している
①造血幹細胞の運命を制御するmiRNAの同定については、標的mRNAの確認をする段階まで来ており、順調に推移していると言える。②miRNA検出方法の技術改良については、AgoとDicerの結合をin situ で確認することができ、抗体がきちんと機能することを確認している。したがって、この技術を応用すれば、活性化型のmiRNAを検出できるものと期待できる。③新たに、Dicer/miRNAシグナルがリンパ管新生にも関与することを発見した。
①造血幹細胞の運命を制御するmiRNAの同定:AGM領域のアレイ解析により同定したmiRNAの標的mRNAの3’UTR領域を用いてレポーターアッセイを行い、miRNAの作用について厳密に検討を行う。さらに、複数存在するmiRNAの影響を単独、または複数作用させることによって造血幹細胞の運命がどのように変化するのか、検討する。②単一miRNA検出方法の技術改良:miRNAが標的とするmRNAの相互作用に必要なRNA配列をもとにしたDNAプローブを用いて、さらに技術の改良を進める。①の実験を利用して、重要な配列の絞り込みを考えている。プローブ作成後には、胎生11.5日および12.5日野生型マウス胎仔の凍結切片を用いて、活性化型miRNAが検出できるか検討する。さらに、Dicer CKOについても同様に検討する。③本研究により、Dicer/miRNAがリンパ管新生にも関与することが分かった。そこで、リンパ管発生初期にどのようなmiRNAが必要であるかを明らかにするために、血管内皮細胞にリンパ管内皮細胞のマスター因子であるProx1発現ウイルスベクターを感染させ、継時的に発現が変動するmiRNAを網羅的に同定し、その役割について検討する。
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J. Biol. Chem
巻: 289 ページ: 12680-92
10.1074/jbc.M114.558981