研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
25118729
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
浅野 謙一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10513400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CD169/Siglec-1 / マクロファージ / 発生・分化 |
研究概要 |
1)CD169陽性マクロファージの分化経路の決定 組織常在マクロファージは、骨髄幹細胞から定常的に移入する単球を経て分化する亜集団と、卵黄嚢に由来する幹細胞が局所で分化・増殖を繰り返す亜集団とに大別されるが、CD169陽性マクロファージがどちらに属するかは解明されていない。平成25年度の研究で、CD169遺伝子座にimproved Cre遺伝子を挿入したマウス(CD169-Creマウス)を作製し、これをRosa26-YFPレポーターマウスと交配した。免疫組織化学、およびフローサイトメトリーによる解析で、CD169発現細胞がこれまでの報告通り2次リンパ臓器(脾臓辺縁帯、リンパ節)に局在することを確認した。このCD169-Cre-YFPマウスを用いることで生体におけるCD169遺伝子の発現を時間的・空間的に追跡することが可能となった。 2)CD169陽性マクロファージ特異的転写因子の探索 平成25年度の研究で、骨髄からCD169陽性マクロファージおよびCD169陰性単球、好中球をセルソーターで分取し、マイクロアレイを用いてCD169陽性分画にのみ強発現する転写因子を複数同定した。今後、それら候補転写因子のCD169分子発現に対する影響を、M-CSF誘導骨髄由来マクロファージにおけるCD169分子の発現を指標にsiRNA法で検討する。ここまでの研究でCD169分子の発現制御遺伝子が同定できたならば、さらにその遺伝子のノックアウトマウスを作製し、生体におけるCD169分子の発現を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、常在マクロファージの亜集団がCD169分子を発現し2次リンパ臓器に局在することは知られていたが、当マクロファージの分化経路の解析は全く行われていなかった。この疑問に答えるため申請者はCD169レポーターマウスを世界で初めて作製し、CD169発現マクロファージがレポータータンパクを発現することを確認した。このマウスを用いることで、CD169遺伝子の発現を、生体内で、字空間的に解析することが可能になるのみならず、CD169発現細胞特異的ノックアウトマウス作製にも広く応用できる。 また申請者は、新たな抗CD169モノクローナル抗体を作製し、骨髄からCD169発現細胞および非発現細胞をセルソーターで効率よく分取する実験系を樹立した。この系を用い、CD169陽性細胞選択的に強発現する転写因子の同定に至った。 以上、平成25年度に達成した成果から、本研究はおおむね当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に同定したCD169陽性骨髄細胞特異的に発現する遺伝子(転写因子)の、CD169遺伝子発現調節における役割をまずin vitroで検討する。申請者は、骨髄細胞をM-CSF存在下で培養することで、CD169発現マクロファージを誘導できることを見出している。この系を利用し、同定した転写因子をsiRNA法でノックダウンし、M-CSF誘導骨髄マクロファージのCD169発現に及ぼす影響を検討する。転写因子の欠損がCD169分子の発現を阻害することが確認できたならば、当該遺伝子のノックアウトマウスを入手あるいは作製し、生体におけるCD169発現細胞の有無や組織形成、疾患モデルに及ぼす影響を解析する。
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