公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
記憶B細胞は主に胚中心において親和性成熟を経て分化するが、その分化誘導に必要な転写因子は不明である。記憶B細胞には特有のマーカーがなく、その数も僅少であるためin vivoでその分化過程を追うことは困難であり、また、ナイーブB 細胞から胚中心B細胞を経て記憶B細胞に分化する過程を再現する培養系が望まれていた。私たちが構築した誘導性胚中心B(iGB)細胞培養系では、ナイーブB細胞から大量の胚中心様B細胞を増殖させ、それをマウスに移入することにより記憶B細胞を誘導できる。この系を基本として、本年度は胚中心B細胞から記憶B細胞への分化誘導に関わる因子群を同定することを目標とした。iGB細胞を最初にIL-4を用いて培養したiGB-4細胞はマウスに移入後、記憶B細胞様のiMB細胞となるが、IL-4の後にIL-21で培養したiGB-21細胞はマウスの骨髄に移行しプラズマ細胞となる。また、このiGB細胞の記憶B細胞への分化能とgp49の発現が相関し、Blimp1遺伝子の発現が逆相関する。そこで、iGB-4細胞に選択的に発現する遺伝子の中からgp49とBlimp1の発現を指標に記憶B細胞系列への分化を促進する転写因子の遺伝子を選択し、さらに、in vivoにおけるiMB細胞形成能により絞り込んだ。その結果、まずBach2に着目した。Bach2欠損マウス由来のiGB細胞はin vivoでiMB細胞を形成せず、また、このマウスではT依存性免疫応答が著しく低下していた。さらに、Bach2 Blimp1二重欠損マウスを免疫したところ、クラススイッチと胚中心形成はある程度回復したが、記憶B細胞は形成されなかった。よって、Bach2欠損による記憶B細胞形成不全の原因はBlimp1の脱抑制以外にあると考えられた。Bach2と同様に、Spi-BもBlimp1の発現を抑制し、iMB細胞形成に促進的に働いた。さらに、Spi-BはPax5やBach2の発現を増強させた。現在、IgG1+ B細胞特異的Spi-B欠損マウスにおける免疫応答を解析している。
2: おおむね順調に進展している
上述の結果を受けて、Blimp1欠損マウスと比較しBach2 Blimp1二重欠損マウスのiGB-4細胞で発現が変動する遺伝子を同定し、それらの機能を解析している。また、IgG1+ B細胞特異的Spi-B欠損マウスにおけるT依存性免疫応答の解析も詳細に行っており、特に、記憶B細胞の形成とその応答の異常について確認中である。さらに、それら以外の候補となる転写因子についても解析を進めている。
Blimp1欠損マウスと比較しBach2 Blimp1二重欠損マウスのiGB-4細胞で発現が増加した遺伝子の1つであるCdkn2a (p16) の役割を解析する。それ以外の、二重欠損マウスのiGB-4細胞で発現が増加した、あるいは減少した遺伝子についてもiGB細胞培養系を用いてそれらの機能を解析する。iGB細胞系において記憶B細胞分化への関与が示唆されたものについては、そのノックアウトマウスを入手し、T依存性免疫応答を解析する。さらに、Spi-Bにより直接発現制御される遺伝子を決定し、その制御機構を解明する。
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PLoS One
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