研究領域 | 構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解- |
研究課題/領域番号 |
25119505
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上出 寛子 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任助教 (90585960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会心理学 |
研究概要 |
本年度は計画通りに自閉症当事者と定型発達者の各30名に対して,人生の重要な出来事(最高,最悪,転換期)についてインタビュー実験を行った.また,個人のwell-beingの程度についても質問紙調査により回答を求めた. インタビュー実験の結果,自閉症当事者群は定型発達者群と比較した場合,現象に対する語りは同じように行う一方,生じた現象と自己を接続するような語りが少ないことが明らかになった.何がいつ,どのように生じたのかについては語る一方で,その際,自己はどのように感じ,どのような影響を受けたのかについての内省が行われていないか,あるいは,語りとして現出してこないという特徴が得られた.well-beingについては,eudaimonicなwell-beingの6要素のうち,人生の目的(人生に目標やねらいを持って生きている程度)については両群に差がなかったが,他の5つの要素は有意に定型発達群が高く,また,hendonicなwell-beingである人生満足度も定型発達群が高かった.インタビューの内容からは,well-beingの要素のうちの一つである自己受容を高めることが人生の目的であるとする自閉症当事者が多かったことから,治療にむけた介入の方向性として,自己受容や,個人の人生の目標について支援してく可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,計画通りの実験を実施することができ,また,得られたデータから自閉症当事者群と定型発達者群の内部観測の連続的変化を捉える構造を明らかにすることができた.また,内部観測をこの構造にしたがって定量化する方法論を確立することができたことから,well-beingとの関連性についても定量的に分析することができ,当初の計画は順調に進展したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は,同様の参加者に対して1年後に当たる時期にインタビュー実験を再度行う.同じ参加者に来てもらうため,再参加率をできるだけ低下させないよう,参加者を募集した派遣会社と連携し,できるだけ参加してもらえるように予定調整などに取り組む.また,得られたデータから,1年で語りが変化するか,どのように変化するか,何がきっかけで変化したのかなどを明らかにし,well-beingを向上させるための内部観測のあり方の特徴を明らかにすることを目指す.
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