研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に引き続き新生児障害の早期発見を目的としたGeneral Movements (GMs)評価システムを開発した.提案システムは,保育器に取り付けた1台のカメラを用いて新生児の運動を計測し,動画像処理を施すことで医学的知見に基づいた運動の特徴抽出を行い,これを確率ニューラルネットに入力することでGMsに基づいた運動識別を行う.児14名を対象に運動識別を行った結果,GMs評価ライセンスを有する専門家の評価結果とおおよそ一致することを確認した.特に,正常なGMsと異常なGMsの二群に分類した場合には92.9±1.98%という高い識別率が確認できたことから,提案システムは診断支援に利用できる可能性が示された[計測自動制御学会論文集, 2014; 日本発達神経科学会第3回大会, 2014]. 次に,GMsの識別精度の向上を目的として深度センサを用いた3次元運動の計測について検討した.その結果,提案システムが抽出した特徴量は深度センサを用いた場合と相関すること(r=0.7程度),深度センサは対象物に強い近赤外光を照射する必要があり,新生児に対する悪影響が危惧されることなどの理由から,提案システムがより臨床応用に適していると判断した.ただし,人間がGMsの評価訓練を行う場合にはGMsの3次元情報が有用である.そこで,GMsをシミュレート可能な新生児の3次元グラフィックスモデルを作成し,iPadを用いたGMs評価訓練システムを構築した. さらに,GMsと自律神経活動の関連性を明らかにするために,新生児の下に敷くだけで圧脈波が計測可能なマットレス型エアパックセンサを開発し,自律神経の亢進状態の推定を行った.その結果,ある程度の推定精度が確認されたが,センサの機械特性が新生児の皮膚や筋の特性と整合していないためノイズが生じてしまうことが明らかになった.これらの問題点は,構成論的発達科学の後半2年間で解決していく予定である.
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