公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では,ヒトが成熟した概日リズムを獲得する過程を,新生児期から乳児期にかけて多面的・連続的に観察し,その影響因子を同定することを目的とし,初年度には,新生児集中治療室入院となる病的新生児80名において,アクチグラフによる長時間体動持続評価・終夜睡眠ポリグラフによる睡眠覚醒評価・非侵襲的内分泌マーカーによる多面的な生体リズム情報の収集を行う予定であった.予定されていた情報収集項目は,すでに研究者らのグループにおいて確立された技術に基づいて計画されていたため,新生児のリクルート開始と共にデータ収集が軌道に乗り,新生児センターに入院する中等リスク児60名において,5-21日間におよぶアクチグラフ装着,および,コルチゾール・メラトニン測定のための非侵襲的検体の収集を行うことができた.コルチゾールに関してはアッセイも随時施行し,研究者らの過去の研究によって明らかになった,生直後のコルチゾール分泌リズムが,日齢と共にどのように変化を遂げるのかを,アクチグラフによる実際の体動周期変化とどう時系列で検討するフェーズに入っている.年度後半からは,研究費で新規購入した時間分解式近赤外線スペクトロスコピーを用いて,脳の微小構造を反映する散乱係数の反復計測を合せて行い,それぞれの児に発生した臨床的イベントが,生体リズムや脳構造にどのような影響を与えたのかを検証するためのデータ収集を開始している.多面的生体リズム観察と並行して,予定日前後の自発的運動を主観的に評価するGeneral Movementの客観定量化(3次元経時赤外光測定),出生時刻と分娩様式から概日リズムの確立時期および影響因子を推定するための大規模サーベイ,検体採取を容易にする生体材料収集法の開発を並行し,平成26年度以降の研究への応用準備が進められている.研究成果は,北米小児科学会にて報告し,一部データは既に論文を投稿中である.
1: 当初の計画以上に進展している
アクチグラフ・内分泌マーカー・睡眠ポリグラフのすべての項目においてデータ収集が可能だった症例は目標をわずかに下回ったが,前述のように,新たな生体リズム観察技術を確立し,フォローアップ体制が整備されているのに加え,時間定量近赤外線スペクトロスコピーによる測定系も確立された.また,質問紙による大規模サーベイの結果から,すでに乳児の概日リズムの重要な決定因子が推測されている.これらを総合的に評価すると,当初予定された以上の成果を達成していると考える.論文執筆に関しても,すでに2編が査読中(うち1編はRevision),もう1編が投稿準備中と,短期間で効率よく成果報告のフェーズに入っている.
当初の計画では,2年目には当院産科病棟で出生する正常新生児60名をリクルートし,胎児期からの超音波運動評価を経たうえで,生後にアクチグラフ・内分泌検体の収集を行う予定であった.しかしながら,当院産科コホートのリクルート可能数が当初予想より少ない見通しとなり,正常新生児コホートの目標は30症例程度に下方修正する.代わって,新生児集中治療室からリクルートする症例数を今年度だけで40症例程度獲得し,平成25年度から行っている内分泌・四肢運動などの多面的生体リズム観察に加えて,時間分解近赤外線・赤外線サーモグラフィーによる脳微小構造マーカーや,自律神経系指標を追加し,より正確な新生児の生体リズム変化の分析を可能とする.
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Acta Paediatr.
巻: 102(6) ページ: e257-262.
10.1111/apa.12203.
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