研究領域 | 構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解- |
研究課題/領域番号 |
25119512
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川崎 真弘 筑波大学, システム情報系, 助教 (40513370)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2015-03-31
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キーワード | 脳波 / 視点変換 / 身体性 / 同期 |
研究概要 |
発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。このような自己から他者への視点変換と身体性の脳情報処理メカニズムを解明することは、発達障害者の行動障害の理解とその後の適切な支援方法の構築につながる。このような運動模倣において、発達障害者と定型発達者ではパフォーマンスや方略がどのように異なるのかについては知られていない。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較することで、発達障害の方略の違いおよびそれに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目的とする。 18名の健常な被験者と18名の自閉症スペクトラム障害(ASD)の被験者が、実験に参加した。ASDはMSPAおよびADOSを用いて診断した。PCディスプレイ上の左右視野に右手または左手が呈示される。この両手の一方が500msecの間、タッピング動作をする。被験者は動いた方の手でなるべく早くタッピング動作を行うことが要求される。両手はPCディスプレイの上下左右のいずれかの方向から中心点に向かって呈示される。 方略の聞き取り調査より、定型発達群は自分の視点を他者視点に移動して、他者視点より他者の手に自分の手を重ねる「視点取得」の方略を、一方でASD群は他者の手を自己視点に心的に回転させて自分の手を重ねる「心的回転」の方略を取ることが分かった。またASD群は自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意に正答率が高く、反応時間も短かった。これはASD群が異なる方略で運動模倣を行うことが困難であることを示唆する。今後の課題として同時に計測した脳波・光トポグラフィの結果を合わせてASD群の方略の違いに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では1年前は実験の遂行のみであった。しかし、実際には1年目ですでに実験が終了し、運動模倣に際して、定型発達群が視点取得を、発達障害群が心的回転の戦略を用いるという決定的な違いを示すことができたことから一つの大きな結果を得ている。これらはパフォーマンス結果の解析からもサポートされており、すでに一つの論文としてまとめられる段階である。さらに基礎的な脳波・光トポグラフィの解析は進めており、あとはこの結果をまとめるだけの段階であり、当初の研究計画を大きく上回る進展である。
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今後の研究の推進方策 |
行動データについてまとめて学会や論文等で発表する予定である。主には、運動模倣に際して、定型発達群が視点取得を、発達障害群が心的回転の戦略を用いること、パフォーマンス結果より、発達障害群は視点取得を使うのが困難であること、これは心理スケールと有意に相関することなどをまとめめる。さらに、このような戦略やパフォーマンスの違いに起因する脳メカニズムを知るために、脳波、光トポグラフィデータを合わせて解析していく。
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