研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
25119701
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀臣 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70582295)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境ストレス / トランスポゾン / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究の目的は、先行研究で同定した“高温ストレスで活性化するトランスポゾン”を用いて環境ストレスにより活性化したトランスポゾンと宿主ゲノムにおける遺伝的なゲノム変化とエピジェネティックな変化を総合的に理解することである。 1、高温ストレス環境下で活性化するトランスポゾンの制御機構の解明 高温ストレスで活性化するトランスポゾン(ONSEN)において、その転写活性を制御する因子の同定を行うためにONSENのプロモーター領域にGFP遺伝子マーカーを融合させた形質転換体を作成し、変異原(EMS)処理を行った。 2、高温ストレスで活性化したトランスポゾンの転移を制御する宿主側の機構の解明 また、ONSENの転移機構を調べる中で染色体外DNAの維持機構に着目した。染色体外DNAはレトロトランスポゾンが活性化し逆転写を行うことで合成されるトランスポゾンDNAである。染色体外DNAの維持もしくは再生成がトランスポゾンの転移に重要であると考えている。染色体外DNAのDNAメチル化状態をバイサルファイトシーケンス法を用いて解析した。その結果、染色体外DNAは野生型と転移の見られるエピジェネティックな変異体どちらにおいても低メチル化状態であることが明らかになった。このことから,染色体外DNAのメチル化が転移の制御に関与している可能性は低いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、高温ストレス環境下で活性化するトランスポゾンの制御機構の解明 当初の研究計画通り平成25年度はONSENのプロモーター領域にGFP遺伝子マーカーを融合させた形質転換体に変異原処理(EMS処理)した植物を作成した。平成26年度は高温ストレスで活性化するトランスポゾンが常温(22℃)でも活性化するような変異体の探索を行う。 2、高温ストレスで活性化したトランスポゾンの転移を制御する宿主側の機構の解明 染色体外DNAはレトロトランスポゾンが活性化し逆転写を行うことで合成されるトランスポゾンDNAである。本申請者が同定したトランスポゾンが転移する条件下ではこの染色体外DNAが配偶子形成段階まで存在することが示唆されている。このことから染色体外DNAの維持もしくは再生成がトランスポゾンの転移に重要であると考えている。平成25年度は染色体外DNAの存在様式を解析する方法を確立した。平成26年度はその詳細な解析が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
1、高温ストレス環境下で活性化するトランスポゾンの制御機構の解明 EMS処理をおこなったONSENのプロモーター領域にGFP遺伝子マーカーを融合させた形質転換体を用いて、高温ストレスで活性化するトランスポゾンが常温でも活性化するような変異体の探索を行う。探索にはGFP蛍光観察によるスクリーニングを行い、常温で転写活性のある変異体を探索する。その後、原因遺伝子の同定を行い、ONSENの転写制御を担っている因子の明らかにする。 2、高温ストレスで活性化したトランスポゾンの転移を制御する宿主側の機構の解明 先行研究からONSENの転移は茎頂分裂組織などのメリステムで起こることが示唆されている。そのため、ONSEN抗体を用いて細胞遺伝学的なアプローチにより免疫染色法による組織特異的な染色体外DNAの局在様式を解析し、組織特異的なONSENの転移制御機構の解明を目指す。 また、先行研究では未分化細胞でONSENの活性化が観察された (Matsunaga et al. Plant & Cell Physiol. 2012)。組織特異的な転移制御機構を解明するために、植物のカルスを用いてONSENの転移頻度を解析する。具体的には、野生型とRNA干渉に関与する遺伝子の変異体を用いカルス誘導を行い、高温ストレス条件下でONSENの転移を解析する。また、カルス細胞における染色体外DNAのエピジェネティックな修飾等の存在様式を解析する。
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