公募研究
移動という逃避手段を持たない植物にとって,急激な環境の変化は大きなストレスであり,随時,適応していかなくてはならない。その中でも低温は,迅速に対応しなくてはならない主要な環境ストレスのひとつである。低温ストレスに応答したmRNA合成と分解による協調的な制御が,mRNA蓄積量の経時変化パターンの形成にどのように関わるのかを明らかにするためには,転写阻害剤とマイクロアレイを組み合わせたmRNA decay arrayを低温処理後経時的に行う必要がある。この手法により低温ストレスによるmRNA分解速度およびmRNA蓄積量の経時変化を同時に測定することができる。研究対象としては代表的なモデル植物であるシロイヌナズナの培養細胞株(T87)を用いた。本年度は,この新規の実験系の確立を目指した様々な予備実験を進めた。今回行ったmRNA decay arrayでは,低温下での60時間におよぶ経時的なサンプリングが必要となり,その間低温条件がきちんと保たれるかどうかが実験成功の鍵となる。予備的な実験を行ったところ,予想していなかったデータが得られ,その要因を様々な方面から検討した。その結果,当初使用を予定していたインキュベータでは,低温条件を長時間一定に保つことが難しいことがわかった。そこで,新しい低温処理法を考案する必要が生じたため予定以上の時間を費やしたが,最終的には信頼性の高いデータを得ることができる実験条件を決定することができた。
3: やや遅れている
新規の実験系の評価において,データに予想していなかった変化が見られ,その原因を追究したところ,使用を予定していたインキュベーターが長時間におよぶ低温ストレス条件を設定するには不適であることがわかった。そのため新たな実験条件の検討および実験条件確認のための予備実験を行う必要が生じたため。
確立した実験条件において最終のマイクロアレイデータ-を取り,そのデータをもとに遺伝子群のクラスタリング解析を行う。さらに,興味深い変化パターンを示す遺伝子に関しては,数学的なアプローチを用いた個別の解析を進めることによって,mRNA合成と分解の制御がどのように協調してmRNAの蓄積量の変化を決定しているのかを明らかにする。
Chiba Labhttps://www.sci.hokudai.ac.jp/~yukako/
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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