公募研究
低温ストレスに応答したmRNA合成と分解による協調的な制御が,mRNA蓄積量の経時変化パターンの形成にどのように関わるのかを明らかにするためには,転写阻害剤とマイクロアレイを組み合わせたmRNA decay arrayを低温処理後経時的に行う必要がある。本年度は最終のマイクロアレイデータを得ることができた。mRNA蓄積量に加えて転写速度(k)とmRNA分解率(λ)も時間の関数であると考えると,mRNA蓄積量(A)の変化は微分方程式dA/dt = k(t)-λ(t) x A(t) で表わされる(t:低温ストレス処理後の時間)。このうち,分解率の変化λ(t)は,低温処理後の各時点において転写阻害剤添加後のmRNA量の経時変化を測定することにより求められる。この際,転写阻害剤を加える前の時点におけるmRNA量は,低温処理後の各時点でのmRNA量の蓄積量A(t)を表すことから,mRNA分解率λ(t)とmRNA蓄積量A(t)の経時変化を同時に測定したことになる。このマイクロアレイのデータをもとに,低温処理後のmRNAの蓄積量および分解率の変化パターンで遺伝子群をクラス分けした。その結果,低温応答に重要な転写因子であるCBFの下流で制御されている遺伝子群は,いずれも低温に応答してmRNAの蓄積量を増加させるが,mRNA分解速度に関しては促進させているクラスと変化しないクラスに分かれることがわかった。さらに,分解速度を促進しているグループの方が,より大きなmRNA蓄積量の増加を示すことが明らかとなった。これら個別の遺伝子に関して,低温処理後のλ(t)およびA(t)の値からkの積分値を近似的に算出した。結果として,CBF下流の遺伝子群のうち,より大きなmRNA量の増加を必要とするものは,その分解速度を促進させることでより迅速で大きなmRNA蓄積量の増加を可能にしていることが示唆された。また,分解を促進するために,その分の転写速度を増加させていることが明らかとなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
Chiba Labhttps://www.sci.hokudai.ac.jp/~yukako/
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Ecology Letters
巻: 17 ページ: 1299-1309
10.1111/ele.12338