研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
25119713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石田 喬志 熊本大学, 自然科学研究科, 特任助教 (00462656)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物 / プロテオーム / 環境 / 蛋白質 / シグナル伝達 |
研究概要 |
翻訳後修飾機構の一つであるSUMO は個体発生プログラムの制御と環境ストレス応答や病原菌の感染応答に関与し植物の安定的な生長を下支えする。しかし、植物細胞ではSUMO がどのようなタンパク質を修飾し機能制御を行っているかはほとんどわかっていない。本研究ではSUMO による生長制御の全容を明らかとするため、ストレス環境下でSUMO 化されるタンパク質を網羅的に単離同定する。環境変動時の生長制御にSUMOがどのように関与しているかを解明することを目標に研究を行った。 本年度は植物細胞から効率的にSUMO化タンパク質を精製するための形質転換体の作製を行った。まずは、SUMO1p: His-Strep-SUMO(H89R)発現ベクターを作製し、アグロバクテリウム法を用いてシロイヌナズナ植物体に形質転換した。複数の形質転換体を取得し、Western blotting により導入したHis-Strep-SUMO(H89R)が十分に発現している系統を確立した。 この系統を用いて、ストレス条件への曝露実験を行い、His-Strep-SUMO(H89R)によるSUMO化が起きることを確認した。少なくとも低温処理や深水処理によって有意にSUMO化が誘導された。また、同条件を用いてSUMO化タンパク質を精製するためのプロトコールの検討を行った。 さらに、確立したSUMO1p: His-Strep-SUMO(H89R)形質転換体を用いてカルスを作製し、さらにそこから培養細胞系統の作製を試みた。これまでに複数系統の培養細胞系統確立に成功している。また、これらの系統ではトランスジーンを保持していることも確認している。今後は増殖効率の検討や導入タンパク質の発現確認を行う必要があるが、次年度以降の研究に供する材料を作製することができたことから、研究を推進するための基盤整備ができたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたSUMO化タンパク質の精製手法の確立と環境変動に暴露した条件下においてSUMO化されるタンパク質の網羅的な単離精製に関しては研究の遂行に若干の遅れが生じた。主な原因は、条件検討に用いる予定であったタンパク精製キットの相次ぐ製造・販売中止により方針転換を余儀なくされたことである。しかし、連携研究者・研究協力者からの助言をもとに改変プロトコールの検討に注力した結果、新法の確立に一定の目途をつけることができた。今後はマイナーな調整を行いつつ、網羅的な単離精製を進めていく計画である。 一方、研究機関を移動したことにより、植物体の育成に利用できる広いスペースを確保することができた。いくつかの実験を同時並行できるようになり、総合的な研究計画の達成度は良好なものになった。このため、当初計画で予定していた培養細胞系統の作製を多数並行させることができたため、よりスムーズに進めることができた。これらの成果により、次年度以降のサンプル作成のための基盤整備ができたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度研究において確立したSUMO1p:His-Strep-SUMO(H89R)系統、及び培養細胞系統を用いて、SUMO化タンパク質の精製を行い、質量分析による同定を進める計画である。タンパク質の精製法については本年度検討した条件を活用し、スムーズに進めてゆきたいと考えている。また、現時点で確認ができている低温や深水条件下でのSUMO化タンパク質の精製に加えて環境刺激や薬剤・エリシター処理など刺激の種類を幅広く検討し、各種条件下でのSUMO化タンパク質の精製と同定を進めていく。その後、得られたデータを統合したデータベースを作成する。十分量のデータを集積した段階で、このデータベースと共に新規手法による植物のSUMO化タンパク質の知見として報告したいと考えている。
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