公募研究
植物は環境ストレス耐性物質を産生し利用することで多くの環境ストレスに適応し生存している。アスコルビン酸(ビタミンC)は、植物においては光・酸化ストレスに耐性を付与する代謝産物であり、ミトコンドリアで合成され、葉緑体に運ばれ、光合成により生じた活性酸素の除去や、過剰な光エネルギーを熱放散する酵素の補酵素として働く。このためにはアスコルビン酸を葉緑体に輸送するトランスポーターが必要であるが、アスコルビン酸の輸送機構は長らく不明であった。我々はシロイヌナズナのアスコルビン酸トランスポーター候補タンパク質を大腸菌に大量発現させ、膜画分を界面活性剤にて可溶化し、アフィニティー精製した。これを人工膜小胞に再構成し、アスコルビン酸輸送活性を測定した。その結果、AtPHT4;4タンパク質が膜電位差、塩素イオン依存的に還元型アスコルビン酸を輸送することを見いだした。間接蛍光抗体法より、AtPHT4;4は柵状組織の葉緑体に多く発現し、葉緑体の包膜に局在していることを明らかにした。この遺伝子を欠損したシロイヌナズナを調べると、葉の中の還元型アスコルビン酸含量が低下すること、さらに、光合成により生じた過剰な光エネルギーを熱放散する過程(非光化学消光)が阻害されることを明らかにした。以上の結果より、AtPHT4;4が長年探し求められていた葉緑体のアスコルビン酸トランスポーターであると結論した。葉緑体のアスコルビン酸輸送を制御することによって、光ストレス下に適応できるストレス耐性能を備えた作物の作出が期待できる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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