研究概要 |
本研究では,オオムギの開花時期制御の鍵となる遺伝子(低温要求性・日長反応性)の発現量の季節変化を追跡し、気温・日長データと合せて解析することにより,地域毎に分化したオオムギ系統毎に,開花時期制御の数理モデル構築と変動環境下における開花予測を目的とする. (1) 温度操作実験系を用いた開花制御遺伝子群の発現モニタリング: 本年度は開花制御遺伝子の発現動態の解析を開始した.集団構造に基づいて選定した9系統を材料に, 0-5週間の低温処理(4,10,15,20℃)を施した後,長日(16時間)日長処理区をグロースキャビネットで設定し,低温処理終了時点(0日)から3ヶ月間,二週間毎のサンプリングを継続中である. (2)圃場栽培条件下における開花制御遺伝子群の発現モニタリング: 申請者が圃場栽培実験を実施する岡山大学資源植物科学研究所(倉敷市)の慣行栽培は,11月下旬播種,5月下旬収穫である.既にサンプリング,RNA抽出を完了しているH24-H25シーズンの圃場サンプルに加えて,2シーズン目の圃場サンプルとしてH25-H26の圃場栽培条件での発現モニタリングに向けて,平成25年11月に解析用の系統を播種し定期サンプリングを実施している.解析には(1)で選定した9系統を供試する.これらを材料に,2月上旬から5月末までの約20週にわたって圃場で1週間毎に定期サンプリングを継続中である. 並行して,発現モニタリング実験に用いる系統のi) 春化要求性遺伝子, ii) 日長反応遺伝子のリシークエンス解析を実施し,qRT-PCRによる発現解析の準備に着手している.本研究では,(1)で> 5,000サンプル,(2)では約500サンプル/シーズンが解析対象となるため,解析単価の低コスト化は必須である.今年度は,実験の各ステップにおける小規模化を試み,低コスト化の実現に向けた実験系の最適化にも取り組んでいる.
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