公募研究
植物が獲得した多様で巧妙な物質代謝系は独立栄養の基盤であるだけでなく,自律的な移動能力の欠如を補償する生存戦略の要でもある。これまでに,窒素リサイクル代謝の一環と理解されてきた核酸塩基(プリン環)の分解が,乾燥等のストレスへの適応にも関与すること,また,その代謝中間体アラントインがアブシジン酸(ABA)生成を亢進する生理活性を有し,シロイヌナズナのストレス耐性を高めることを示した。本年度も昨年度に引き続き以下の3項目を中心に研究を進め,以下の知見を得た。1.アラントインによる ABA生成亢進の作用機序:ABA生成を亢進するアラントインのプライマリーな作用点が,ABA配糖体の分解を触媒するBG1を介したABA再生系にあることを遺伝学的に示した。即ち,アラントインを恒常的に蓄積するシロイヌナズナaln株とBG1のノックアウト株の二重突然変異株を作出し,本株がABAレベルの亢進やABA応答などアラントインの蓄積に誘導されるaln株の変異表現型をほぼ喪失することを明らかにした。2.アラントインに非応答な変異体の単離:アラントインの投与に対して強く応答するシロイヌナズナ遺伝子プロモーターの発現制御下でレポーターを発現する形質転換株を作出し,これを親株としてアラントインに非応答な変異体の取得を目指したが,その単離には至らなかった。3.アラントインの代謝操作によるストレス耐性の改変:プリン分解の窒素リサイクル機能を損なうことなくシロイヌナズナのストレス耐性を高める手段として,ストレス誘導的にアラントインを蓄積する形質転換体を作出し,本株が乾燥に対して野生株やaln株よりも高い耐性を獲得していることを明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 458 ページ: 536-542
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http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/mpb/index.php