研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
25119725
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀬尾 光範 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (00512435)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物ホルモン / ジベレリン / 輸送 |
研究概要 |
ジベレリン(GA)は、種子発芽、伸長生長、花成、生殖など、植物の生活環の多様な場面で重要な生理作用を示す植物ホルモンである。これまでにGAの生合成、分解、受容、情報伝達に関与する主要な因子が特定され、それらを介した植物の生長制御機構が明らかになってきた。しかしながら、GAの「輸送」に関しては、その制御機構や生理的意味がほとんど明らかになっていない。我々は、酵母two-hybrid系による受容体複合体再構築系を利用した機能的スクリーニングにより、細胞内にGAを取り込む活性を持つタンパク質を4種(GIT1-4)同定した。本研究では、これらのタンパク質の植物体内でのGA輸送体としての機能を明らかにし、植物の環境応答におけるGA輸送を介した生長制御機構の解明に取り組んだ。 プロモーター・レポーター系を用いた解析から、GIT1およびGIT2は葯で発現していること、GIT3およびGIT4は芽生えの維管束組織で発現していることが明らかになった。この発現パターンと一致するように、git1 git2二重変異体では葯の解裂異常を伴う稔性の低下が観察され、git3 git4二重変異体においては芽生えの成長阻害が観察された。また、少なくともGIT1およびGIT2 のGA輸送活性に関しては、それぞれのタンパク質を発現させた酵母細胞とGA溶液を混合し、一定時間後に細胞内に取り込まれたGAを質量分析器(LC-MS/MS)で測定する直接的なアッセイにより確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析器(LC-MS/MS)を用いた直接的なアッセイにより、酵母におけるGITタンパク質のGA輸送活性が、実験を開始してしばらくの間検出することが出来なかったが、反応バッファーなどの反応条件を詳細に検討した結果、現在では少なくともGIT1とGIT2に関してはGA取り込み活性が検出できるようになった。この条件設定に予想以上の時間を費やしたが、突然変異体の表現型の解析や、プローもター・レポーター系導入形質転換体の作成などは、計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、継続してGITタンパク質の輸送活性を、LC-MS/MSを用いた直接的なアッセイにより詳細に検討する。これまでは主に活性型GA(GA1、GA3、GA4)に対する輸送活性を検出してきたが、活性型以外のGAに対する基質特異性も検討する。また、GA以外の植物ホルモンなどに対する輸送活性も検討し、生体内でのGITの特異的な輸送基質を特定する。さらに、これまでに観察されているGITの機能を失った突然変異体の表現型が、植物体内でのGA輸送が異常になったために引き起こされたものであるか検討する。もし、変異体の表現型がGA輸送の異常と関連していれば、植物体内での局所的なGAの局在が、野生型と比べて変化していると予想される。このため、特定の器官や組織における内生GA量を、野生型と変異体の間で比較する。また、同位体ラベルしたGAを外部から添加し、それが植物体内でどのように輸送されるのかを、野生型と変異体の間で比較する。
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