近年、生物模倣型の信号伝達/情報処理デバイスは、高エネルギー効率の処理が可能であるため、超低消費電力のプロセッサとして注目されつつある。 本研究では、ニューロン模倣型の確率的閾値デバイス素子の作製を目指して研究を行った。生物の柔軟な信号伝達/情報処理に重要な素子の「確率性」は、構造様式制御型ポリ(3-デシルチオフェン)[RR-P3DT]のキャリアトラップ充填転移付近の確率的な電気伝導特性を利用した。示差走査型熱量(DSC)計測と温度可変固体高分解能C-13核磁気共鳴(NMR)計測より、このキャリアトラップ充填転移はRR-P3DTのチオフェン環のツイスト運動と相関をもっていることが明らかとなり、分子運動のゆらぎが巨視的な物性ゆらぎを生じさせていることがわかった。さらにノイズ計測の結果より、キャリアトラップ充填転移を境界として、ノイズのパワースペクトル密度の関数型が、低電圧側ではDebye型、高電圧側では1/f型であることがわかり、印加電圧によってノイズのパワースペクトル密度の関数型の制御が可能であることが明らかとなった。このことは、ノイズ駆動型信号伝達デバイスやスイッチデバイスの実現にとって重要な技術要素となる。 以上のことから、RR-P3ATを中心としたノイズ駆動型信号伝達デバイス素子の作製を通して、生物模倣型エレクトロニクスデバイスの開発と学理を追求した。
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