研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
25120509
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 哲生 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20466783)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヤモリ / 生物規範工学 / 材料力学 / スパチュラ / コンタクトメカニクス / バイオミメティック |
研究概要 |
ヤモリは,地面だけでなく壁や天井をも難なく歩き回ることができるといった,すぐれた力学的機能を持っており,その機能の源は,手足にある微細な繊維状構造にあると考えられている.また,その構造を(部分的に)模擬することによって,ヤモリ手足の機能を再現しようとする試みが数多くなされている.しかしながら,まだ成功しているとはいい難く,更なる研究開発が必要であった. 本研究では,ヤモリのもつ易接着・易剥離などのすぐれた性質を人工物である粘着剤で実現するため,ヤモリ手足の材料力学的効果に着目した.研究実施計画ではこれまでの研究と同様,ミクロ配列構造を作成することを意図したが,研究の過程で単一の構造をその場観察を行ないながら詳細に調べ,その知見を元に最適化を図ることが必要であると判断し,実際には,ヤモリ手足のスパチュラ構造をヒントに,曲率をもったアーム部の先端にへら(スパチュラ)状のパッドを持つ人工構造を作成し,引張試験機を用いてその粘着・剥離特性を調べた.その結果,垂直方向への圧縮の後,水平方向に動かす際の向きによって,その後の垂直方向への剥離力に大きな違いが生まれることを明らかにした.これは,粘着・剥離のON・OFF(スイッチング)の可能性を示唆している.これまで,垂直方向への粘着・剥離に水平方向の動きを加えることによって,粘着・剥離を制御しようとする試みはいくつかなされているが、本研究のように,実際にスパチュラ構造の変形や基板への接触をその場観察し,その知見を形状や物性の最適化に用いようとする研究は,われわれが知る限り初めてである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画とは研究の方向が若干異なっているが,既存研究とは一線を画する「形状の物性・形状の詳細な検討および同時最適化」という考えを導入することができた.これによって,これまでにない研究手法を提案し,新たな研究成果をあげることができると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでの研究によって得られた「単一スパチュラ構造の物性・形状同時最適化」の成果を最大限に生かしつつ,当初計画で考えられていた「ミクロ配列構造」の作成に挑む.また,ヤモリ模擬構造にとどまらず,さまざまな構造の作成に取り組み,力学的機能の普遍性の探求や,数学的抽象化にも取り組む予定である.
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