公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1.「CPD光回復酵素遺伝子(PHR)のUVB発現誘導」:シロイヌナズナを材料に、CPD光回復酵素(PHR)のUVBによる発現誘導のメカニズムに着目して、UVB光受容体と考えられているシロイヌナズナのUVR8変異体(T-DNA)、RNAi法により作製したシロイヌナズナUVR8発現抑制体、クリプロクロム二重変異体cry1 x cry2、フィトクロム二重変異体phyA x phyB、さらにはUVR8、Cry、phyを介したシグナル伝達系で共通なシグナル伝達因子COP1、転写因子HY5欠損変異体を材料に解析を進めた。その結果、(1)PHRの光発現には、UVR8、Cryの光受容体を介して発現誘導されること、(2)さらに興味深い事に、UVR8の発現抑制個体、変異体、さらにはHY5変異体においては、UVBによるPHRの発現抑制は完全には抑制されず、野生型と比較して野生型の30~40%の発現誘導が認められた。これらの結果は、UVBによるPHRの発現誘導は、UVR8 (or Cry)→COP1→HY5(HYH)のシグナル系を介さない新規な発現制御系が存在していることを示唆していると考えられた。2.「CPD光回復酵素のオルガネラ移行メカニズムと細胞内局在に関する光応答反応」:種々の生物のPHRアミノ酸配列情報を基に、イネPHRの葉緑体移行シグナル配列の推測を行ったところ、いくつかの候補個所を見出した。現在、葉緑体移行シグナル配列の同定を試みている。3-1.イネ個体から精製したCPD光回復酵素精製標品の結晶化:現在精製標品の安定性、酵素活性の検討を終え、結晶化に必要な量のタンパク質の精製を行っている。3-2.ゼニゴケ、シダ、イネ、シロイヌナズナにおけるCPD光回復酵素の活性、構造、UVB抵抗性に関する比較解析:現在、各植物からCPD光回復酵素を精製し、精製タンパク質を材料に、タンパク質の比活性の比較を実施している。
2: おおむね順調に進展している
概ね、平成25年度の計画は予定通り、遂行された。研究課題3-1に関しては、精製タンパク質の安定性(活性レベル)が当初の想定より低いことが分かったため、一回の精製過程でより多量のタンパク質の精製が可能になるように、実験系のスケールアップを行った。本課題は、平成26年末までの2カ年計画であるが、26年度末までには、予定通り実施できると考えている。
課題1に関しては、現在COP1欠損変異体を材料に最終確認を行っている。また同時に、イネ、シロイヌナズナのPHR上流3 kbpのプロモーター領域に、GUSとLUCを連結したコンストラクトをシロイヌナズナ、およびUVR8変異体に導入した組換え体を作製した。今後は、こららを材料にプロモーター解析を実施する。課題2に関しては、葉緑体移行シグナル配列は、基部陸上植物ゼニゴケとイネでは異なっている可能性が推測された。この結果は、植物が陸上に進出した後に、移行メカニズムが変化したことを意味している。そこで、今後はまずゼニゴケとイネの葉緑体移行シグナル配列を同定すると同時に、進化的な観点からの解析も含め、実施する予定である。課題3「CPD光回復酵素の構造変異とUVB適応戦略機構に関する研究」では、現在結晶化に向けてのイネPHRの精製作業を実施しており、来年度中には精製標品を材料にCDスペクトル解析等実施する予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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