研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
25120704
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
森安 裕二 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20200454)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オートファジー / 細胞死 / 暗誘導老化 / 環境ストレス / 乾燥 / ヒメツリガネゴケ |
研究概要 |
1.ヒメツリガネゴケ暗所で誘導される細胞死の解析 (1)暗誘導老化に伴う緑葉の老化マーカー遺伝子の発現パターンを解析し、ヒメツリガネゴケ原糸体の老化過程でもいくつかの高等植物で見出された緑葉老化マーカー遺伝子の転写活性が上昇していることを明らかにした。 (2)暗所で誘導される老化過程におけるタンパク質の変動を解析し、リブロース2リン酸カルボキシラーゼが減少することがわかっていたが、その他のタンパク質の変動を詳しく調べるため、二次元電気泳動による解析の実験条件を確立した。 2.ヒメツリガネゴケ乾燥ストレスで誘導される細胞死の解析 (1)乾燥処理により細胞内の含水量を低下させた後、栄養培地上で吸水させると、吸水過程に入ってからの比較的短時間でLEA-likeタンパク質を含む細胞内タンパク質の激しい分解が起こることがわかった。この分解はオートファジー欠損株atg5株でもほぼ同様に進行したので、まずLEA-likeタンパク質の分解にはオートファジーが寄与していないと考えられた。さらに乾燥ストレス耐性を付与すると考えられるLEA-likeタンパク質などの保護タンパク質がオートファジーにより分解されてしまうことが原因で野生株がatg5株よりも乾燥ストレス感受性になるという考え方はできないと結論した 。 3.ゼニゴケ葉状体細胞死の解析 (1)ゼニゴケ葉状体を暗所に置いたときにおこる老化の変異体をスクリーニングし、暗所に置くことで急速に老化する変異体を得た。さらにスクリーニングを続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付された研究費で植物インキュベーターを購入することができ、ヒメツリガネゴケの培養の設備が改善された。このことなどにより、ほとんどの実験がほぼ計画通りに進行した。ただ、オートファジー関連遺伝子破壊株の作成が計画よりも遅れており、他のいくつかの実験の中にも研究計画通りに進行しないものがあった。 よって、(2)おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒメツリガネゴケ暗所で誘導される細胞死の解析 (1)ATG5遺伝子破壊株以外のオートファジー関連遺伝子破壊株を単離する。(2)二次元電気泳動を用いて、暗誘導老化に伴う野生株とオートファジー欠損株のタンパク質分解の詳細を解析することから、オートファジーの基質タンパク質を明らかにする。(3)細胞の増殖能力を生死判定の指標にして、暗処理時間を横軸に、生きた細胞の割合を縦軸に描いたグラフを作成する。暗処理後に生存を分ける閾値が存在するかどうかを明らかにする。 2.ヒメツリガネゴケ乾燥ストレスで誘導される細胞死の解析 (1)二次元電気泳動を用いて、吸水後に急速におこるタンパク質分解を解析し、野生株とオートファジー欠損株を比較することから、オートファジーの基質タンパク質を明らかにする。 (2)総細胞数が数個からなる小さなコロニーを用いて、乾燥ストレスを与える実験を行い、1つの細胞の生存率を計算できるように実験系を改良する。 3.ゼニゴケ葉状体細胞死の解析 (1)ゼニゴケ葉状体を暗所に置いたときにおこる老化の変異体をスクリーニングをさらに続ける。(2)得られた突然変異体の原因遺伝子を明らかにする。
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