公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
膜交通は、タンパク質などを細胞内の正しい場所へと輸送するために必須の機構であり、細胞の多様な機能を発現するうえでも重要な役割を果たしている。本研究では、環境ストレスに対するポストゴルジオルガネラのダイナミクスを、ライブイメージングにより徹底的に明らかにする。また、外部環境刺激の「受容」や刺激に対する「応答」と膜交通の接点で機能する因子を、膜交通関連変異体の外部環境刺激への応答を詳細に調べることにより探索する。これにより、ポストゴルジ膜交通の環境刺激応答における役割を明らかにすることを目指す。本年度は、ストレス応答におけるオルガネラダイナミクスの観察を行った。その結果、高塩ストレス下ではTGNが多くの小胞を形成していることが示唆された。また、TGN機能が損なわれたsyp4変異体ではNHX6の細胞内局在が異常になることから、syp4変異体が高塩ストレスに弱くなる原因の一つとしてNHX6が正しく局在できないために細胞内の塩濃度を調整できないことが考えられた。うどん粉病菌に対しても、syp4変異体では分泌小胞の挙動が異常になっていることも見いだしている。これらの結果から、TGNがストレス応答における重要なオルガネラであると考えている。また、ストレス環境下でのポストゴルジオルガネラのダイナミクスをライブイメージングにより明らかにするための観察システムの構築もおこなった。高速撮影が可能なニポウディスク方式の倒立共焦点レーザー顕微境に多点画像取得機能と自動フォーカス機能を搭載したシステムを構築した。しかしながら、根などの厚みのあるサンプルでの長時間イメージンについてはまだ良い結果が得られておらず現在改良中である。
2: おおむね順調に進展している
高塩ストレス化でTGNが小胞化するという新規の発見は、塩ストレス応答における膜交通の役割を考えていくなかで非常に重要な発見であった。また、積み荷タンパク質の候補としてNHX6を同定したことは当初の予定よりも早く研究が進んだ成果である。
今後は、環境ストレス応答前と応答後のオルガネラの挙動についてSCLIMを用いて観察することで微細なオルガネラ動態の解析を目指す。また、長時間ライブイメージングの観察システムを構築することで、どのようにオルガネラが変化していくかについて解析を行う。また、TGNが関与する塩ストレス応答の実行因子としてNHX6がどのように機能しているかについて詳細に解析を行う。TGNが担う環境ストレス下での葉緑体機能の発現維持機構の解明に向けて、ストレス条件下で生育させた際にsyp4変異体の葉の黄化・白化の表現形が抑圧される変異体いついて、遺伝子マッピングもしくは次世代シーケンサーにより原因遺伝子の同定を目指す。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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