公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1. Ca2+透過性機械受容チャネルであるMCA2の立体構造を明らかにする目的で、MCA2精製標品を低温電子顕微鏡で撮影し、単粒子解析を行った。得られた画像と膜トポロジーデータとを総合的に考慮し、立体構造モデルを作製した。この研究成果はPLoS ONE誌(2014)に掲載された。2. mca2欠損株の根は野生株、mca1欠損株およびmca1 mca2二重欠損株の根とは異なり、寒天培地の表面またはゲルライト培地の表面で異常な振る舞いをすることを明らかにした。具体的には、第一に、縦に置かれた寒天培地の表面を野生株の根が傾斜伸長する(skewing)条件下で、mca2欠損株の根はより強いskewingを示した。第二に、根が貫入できない固いゲルライト培地を水平に置くと、mca2欠損株以外の株の根は、培地表面から跳ね上がり、水と養分を吸収できず植物体はやがて枯死した。一方、mca2欠損株の根は表面に密着して伸長し、水と養分を吸収できるので、植物体は生長することができた(投稿準備中)。3. mca1欠損株とmca2欠損株において、低温刺激後の細胞内Ca2+濃度の上昇が野生株の約1/2であったので、両欠損株における低温誘導性のCa2+シグナル依存的転写因子であるCBF1、CBF2およびCBF3のmRNAの発現量をRT-PCR法で調べた。その結果、低温刺激後のシグナル伝達は、MCA1/2活性化 → Ca2+上昇 → CBF1/2/3発現誘導という単純な流れではないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的の一つは、機械刺激の受容体の構造を明らかにすることである。平成25年度にその受容体の中心となるCa2+透過性機械受容チャネルMCA2の構造を明らかにし、論文発表した。また、生理機能の観点から、MCA2遺伝子を欠損した変異株の根の新たな表現型を見つけることができた。これらのことから、本研究は当初の目的を順調に達成していると判断できる。
今後は、mca2欠損株の根の異常な振る舞いが何に起因しているかを明らかにする。具体的にはオーキシン輸送、表層微小管の配向性を調べる予定である。また、低温刺激に関与する、CBF1/2/3以外のCa2+依存性の制御タンパク質およびタンパク質キナーゼを調べる予定である。また、これらの研究とは別にMCA1またはMCA2と相互作用をするタンパク質の検索を行う予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
PLOS ONE
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新学術領域研究「植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで」News Letter “Perspective Plants”
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http://www.u-gakugei.ac.jp/~iida/