1.MCA1のCa2+透過性機械受容チャネルとしての機能を調べる目的の一環として、これまで低浸透圧刺激後の [Ca2+]cytの変化を、イクオリンをプローブとして、MCA1高発現株と野生株の芽生えについて調べてきた。今年度は、新たに同じ方法を使ってMCA2ついて調べた。その結果、MCA2高発現株の芽生えではMCA1高発現株の芽生えと同様に、野生株の芽生えよりも低浸透圧刺激後の[Ca2+]cytの上昇が2~3倍ほど高かった。この上昇は、低浸透圧溶液に20 mM EGTA、1 mM GdCl3、または1 mM LaCl3を共存させることにより完全に阻害された。したがって、MCA1とMCA2は低浸透圧刺激を感受して細胞外からCa2+を流入させるはたらきをもつことが明らかになった。 2.MCA1とMCA2がCa2+透過性機械受容チャネルとして機能することから、両者の遺伝子は機械刺激を受けると発現が誘導される可能性が考えられる。そこで、MCA1-promoter::GUS発現株とMCA2-promoter::GUS発現株を使って、以下の3つの条件下で暗所4日間生育させた:①シュートが何にも接触しないで生育、②縦置き寒天培地の表面をシュート全体が寒天培地に接触しながら生育、および③シュートが成長してシャーレのふたに接触するように生育。これらの植物体をGUS染色して観察した結果、MCA1は、「①接触なし」の条件下ではシュートで発現しなかったが、「②全体の接触」の条件下では子葉全体と胚軸上部で発現し、「③子葉の接触」の条件下では子葉の上部と胚軸の上部で発現することが確認された。一方、MCA2は、「①接触なし」の条件下では子葉全体で発現したが、「②全体の接触」の条件下では子葉全体と胚軸全体で発現し、「③子葉の接触」の条件下では子葉全体と胚軸のほぼ上半分で発現することが確認された。
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