公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、植物細胞の液胞や葉緑体内膜部への利用を念頭に、酸性条件において機能する酸化還元状態応答性蛍光タンパク質を開発することである。また、そのためのスクリーニング系を構築することである。1.「Mut12の化学特性測定」:シロイヌナズナphot2-LOV2ドメインC426A変異体(LOV(C/A))にランダム変異を導入して選別したMut12の化学的特性を調べた。精製したMut 12に様々な還元剤存在下で光照射を行い、その酸化型FMNの減少を蛍光分光光度計を用いて観測した。還元剤フェロシアン化カリウムが存在する条件で測定したところ、還元剤の濃度を反映した還元速度や光定常状態の酸化型の量が観測された。同様に還元剤としてNADHやNADPHを用いたときも濃度依存性が観測された。このことは、Mut12の光還元が還元剤の濃度を反映していることを示している。2.「酸性環境下で機能する蛍光タンパク質の大腸菌によるスクリーニング法の開発」:蛍光タンパク質候補を精製することなく大腸菌体のまま酸性条件にしてスクリーニングを行うために、光誘起プロトンポンプを形質膜に、蛍光タンパク質をペリプラズム領域に発現させることにより酸性環境を実現化する。蛍光タンパク質としてGFPを発現させ、光誘起プロトンポンプが活性化される550 nm以上の光照射でGFPの蛍光強度の減少が起こることを期待した。光誘起プロトンポンプとしてプロテオロドプシン(PR)を用いて、大腸菌の懸濁液を緩衝能の低いものにしさらにpH=6にしたところ、GRへの光照射に伴ってGFPの蛍光強度が減少した。これはGFPの発現したペリプラズム領域がGRにより酸性化したことを示唆した。本研究に関連して、微生物型ロドプシンの一種であるチャネルロドプシンの性質をFTIR分光法により調べ、レチナールプロトン化シッフ塩基周囲に水分子の存在が確認され、これがイオン輸送機能に関連している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、蛍光タンパク質の大腸菌体内でのスクリーニング系の構築を目指した研究を行い、実際に達成することが出来た。同時に、微生物型ロドプシンの一種であるチャネルロドプシンの特性をFTIR分光により調べ、その成果を発表することができた。
平成26年度は酸化還元応答性蛍光タンパク質の鋳型として、LOVドメイン変異体以外にGFPを対象として変異導入による作製を試みる。また、実際にスクリーニングを行ったフラビンタンパク質変異体に対して、実際に植物細胞や植物体にて発現を行い、その蛍光の挙動を観測する。また、他の微生物型ロドプシンの性質を調べることで、蛍光タンパク質のスクリーニング法の適性について調べたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J. Am. Chem. Soc.
巻: 136 ページ: 3475–3482
10.1021/ja410836g
http://researcher.nitech.ac.jp/html/100000171_ja.html