公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
フォトトロピンにより受容された光シグナルは、未知の情報伝達を経て細胞膜H+-ATPaseを活性化させ気孔を開口させる。本研究では上記情報伝達に関わる新奇因子を同定することを目的として、赤外線サーモグラフィによる変異体スクリーニングを行い、気孔開口の鍵因子BLUS1キナーゼを単離した。本年度はBLUS1が青色光シグナルを伝達する分子機構について研究を進め、以下の成果を得た。昨年度のリン酸化プロテオーム解析から、BLUS1のC末端側のSer残基が青色光に応じてリン酸化されること、このリン酸化は気孔開口に必須であることを示した。そこで、このリン酸化Serを特異的に認識する抗体を作製し、BLUS1のリン酸化タイムコースを詳細に調べた。孔辺細胞に青色光パルスを照射すると、BLUS1は青色光照射15秒目で既にリン酸化が開始され、1分目で最大、5分目で脱リン酸化されることが分かり、このタイムコースはフォトトロピンの自己リン酸化とよく対応していた。そこでBLUS1がフォトトロピンのリン酸化基質となる可能性についてin vitroキナーゼアッセイにより調べたところ、BLUS1は青色光依存的にphot1により直接リン酸化される証拠を得た。また孔辺細胞を用いた共免疫沈降解析から、両者は細胞内で複合体を形成していることを見出した。さらにin vitro pull-downアッセイによりphot1とBLUS1の結合を調べたところ、両者は直接相互作用することが明らかとなった。以上の結果から、BLUS1はフォトトロピンの基質であり、フォトトロピンによるBLUS1のリン酸化は青色光情報伝達の初期過程であると結論づけた。
1: 当初の計画以上に進展している
フォトトロピンのリン酸化基質としてBLUS1を同定し、フォトトロピン情報伝達の初期過程の一端を解明できた。本成果は、植物の光環境感覚の理解において重要な知見をもたらすものと考える。
今後は引き続きスクリーニングで単離された他の変異体の解析を進めるとともに、次世代シーケンスやマッピングにより原因遺伝子を同定する。リン酸化プロテオームにより同定された因子に関して、気孔開口に関与する因子の特定を進める。またアミノ酸置換の手法を用い、気孔開口におけるリン酸化の意義を明らかにする。
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Nature Communications
巻: 4:2094 ページ: -
10.1038/ncomms3094