研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
25121502
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 英太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60360749)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋物理 / 塩分 |
研究概要 |
南北太平洋の高塩分水(回帰線水)の形成・サブダクション過程を対象に研究を行った。北太平洋回帰線水(NPTW)の形成域である亜熱帯域中央の海面塩分極大域では、その東西で混合層塩分の変動が大きく異なり、東側では季節変動、西側では経年変動がそれぞれ卓越していた。東側の季節変動は蒸発、降水、混合層の下からの低塩分水のエントレインメントという鉛直プロセスによって支配されており、混合層深度の季節変動とよく対応していた。一方で、西側の経年変動は蒸発、降水、Pacific Decadal Oscillationに関連した水平渦拡散によって支配されていた。NPTWはサブダクト後、亜表層塩分極大を形成し、形成域西側の経年変動を反映しながら下流域のフィリピン海へと運ばれていた。 南太平洋回帰線水(SPTW)の形成域でもNPTWの場合と同様に、その東西で混合層塩分の変動が異なり、東側では季節変動が卓越し、西側では季節、経年変動の振幅は同程度であった。東側の季節変動は蒸発、混合層の下からの低塩分水のエントレインメントによって支配され、NPTWと同様、混合層深度の季節変動をよく対応していた。一方で、西側では混合層塩分収支が閉じず、その変動メカニズムは明らかにできなかった。SPTWはサブダクト後、亜表層塩分極大を形成するが、赤道域までは達していなかった。また、サブダクト後の経年変動が西経160度付近で変質し、形成域の変動が下流域までは伝わらず、NPTWとは対照的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この1年で、NPTWの形成・サブダクト過程だけではなく、SPTWの諸過程についても解析を進めることができ、両者の形成域における変動メカニズム、サブダクト過程を明らかにすることができた。特にNPTWのサブダクションは形成域の経年変動を下流域へと伝える一方で、その伝播がSPTWの場合では見られないという、南北のサブダクトの差を明らかにした。NPTWの形成・サブダクション過程に関する研究結果は、米国気象学会誌に掲載された(Katsura et al. 2013)。さらに、下記に示すバリアレイヤーの形成メカニズムに関する予備的な解析を行い、シンポジウム等で発表するとともに議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、南北太平洋亜熱帯域におけるバリアレイヤーの形成メカニズムを明らかにすることを目的として研究を進める。バリアレイヤーとは、等温層深度が混合層深度よりも深い場合、両者の間の層のことを指す。バリアレイヤーは主に赤道域に見られるために、これまでの研究は西部熱帯太平洋のバリアレイヤーを対象にしたものがほとんどであった。Sato et al. (2004, 2006)によって、亜熱帯においても海面塩分フロントに伴って冬季にバリアレイヤーが形成されることが報告され、この形成に南北太平洋の回帰線水のサブダクションが重要であると示唆されている。しかし、その詳しい形成メカニズムは分かっていない。これまでの研究で明らかになった、NPTWとSPTWのサブダクション過程を踏まえながら、アルゴデータを用いた解析により、亜熱帯域におけるバリアレイヤーの形成メカニズムを調べる。
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