公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本年度は、2008年夏季に行われた北西太平洋東経155度線に沿った観測におけるクロロフィル極大直下における、鉄と硝酸、珪酸と硝酸の鉛直混合フラックス比と、植物プランクトン種の間に見られる関係を報告するとともに、本プロジェクトの航海である白鳳丸KH13-7航海において、表層から深層までの鉛直混合の実測を行った結果を報告する。また、鉛直混合と物質輸送について以下の研究成果を得た。1)東シナ海陸棚縁辺を流れる黒潮付近で鉛直混合が硝酸塩フラックスを通じて植物生産に重要な影響を与えていることをあきらかにした。2)黒潮前線域における強い鉛直混合によって硝酸塩フラックスが強化されていることが明らかとなり、黒潮付近の高生産を支えていることを示唆した。3)冬季の黒潮前線域の混合層深度と春季のクロロフィル濃度の間に正の相関関係があることを明らかにし、マイワシ再生産への影響を論じた。4)ベーリング海東部陸棚縁辺域での夏季でも持続する生物生産を支える鉄供給を担っていると推測されている鉛直混合が、陸棚縁辺での1日・半日周期の内部潮汐波動が鉛直流速シアや鉛直混合を強めることに起因することを数値モデリングによって明らかにした。5)マイワシ卵仔魚の分布の年々変動を粒子追跡実験によって明らかにし、マイワシの生き残りが輸送中の水温・餌環境と関連することを明らかにした。6)オホーツク海北西部から東サハリン海流に沿って中層に極大を持つ溶存鉄が、千島列島付近での強い潮汐鉛直混合によって表層から深層に再配分され北太平洋に流出し、北西太平洋の鉄分布に大きな影響を与えていることを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題の目的である、鉛直混合を通じた物質供給による生物生産の研究は、当初課題設定よりも、多くの対象に広がり、かつ、大きな進展を見せているため。
本プロジェクトで推進したKH13-7航海の観測結果の解析を進め、CTD取り付け型乱流計の観測データの有効性をさらに追求するとともに、LADCPなど同時に観測した流速データと併せて乱流発生過程を検討する。鉛直混合の観測データと、プロジェクトの他課題(A02小川浩史氏、武田重信氏、A01伊藤幸彦氏・纐纈慎也氏、鈴木光次氏、公募・西岡純氏)からのデータを併せて、物質の乱流鉛直輸送を明らかにし、生物生産との関連を検討する。H26年度に主に別経費で、千島列島付近での詳細な観測を実施するので、鉛直混合・鉛直物質輸送と生物生産との関係について研究を進める。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 備考 (1件)
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