研究領域 | 新海洋像:その機能と持続的利用 |
研究課題/領域番号 |
25121507
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松井 隆宏 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10600025)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 漁業管理 / 経済実験 |
研究概要 |
今年度は、割引率に注目し、割引率の高さが、漁業者組織およびその構成員のどのような特質から生みだされているのかについて検討し、また、資源管理の問題(どのような時に成立し、どのような時に成立しないもしくは効力を発揮しないのか)について分析するための、資源管理意識を被説明変数とした計量経済学的な分析をおこなうことに向けて、漁業者を対象としたアンケートをおこなうとともに、時間選好(割引率)、リスク選好、互酬的協力度(→公共財ゲーム)、を経済実験により計測した。くわえて、海の恵みの非市場性に鑑み、生態系に配慮した商品のプレミアムに対する支払意思額(→生態系保全意識)について分析するために、学生(消費者)を対象としたアンケート、および経済実験(上記3つに加え、独裁者ゲーム、最後通牒ゲーム)をおこなった。 学生実験の結果は、先行研究で推計された値と概ね同じ水準のものが多く、実験による被験者の選好統制が問題なくおこなわれたと考えられる。生態系保全意識および(比較対象とした)資源保全意識の決定要因に関する計量分析の結果は、利他性が「環境保全意識」のみで有意で、かつ、こちらの方が値自体も大きいものとなった。これは、生態系保全と資源保全では、前者はその影響が直接自分にはね返ってくるものではない一方、後者ははね返ってくるものであることから、前者のみ「利他性」の影響があることを示唆していると考えられる。 漁業者実験についても、現在順調に進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績」に記載の通り、実験結果は問題なく出ており、2年計画の1年目としては、概ね順調に進んでいる。本研究の中心的課題である経済実験については、まず、予備実験が順調に進み、結果も問題なく出ている。本実験についても、漁業の季節性から、1年目に実施予定だったもののまだ実施に至らなかったところもわずかながら存在するが、ほとんどの地域で実験を終えており、また、未実施の地域に関しても、既に目途は得られている。 高齢者を含む漁業者を対象としていることから、リスク選好の実験の際にスイッチが2回起こることがある等の問題が散見されたが、アンケート設計の調整の方向性も確認でき、また、漁業管理手法の地域的な傾向についても、具体的な分析は終えられていないが、分析に用いる資料の整理は終えられている。 以上から、現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、漁業管理手法の地域的な傾向について分析するとともに、漁業者の資源管理意識とその他の様々な特質との関係を明らかにすることである。 漁業管理手法の地域的な傾向についての分析は、漁業管理の運営主体や内容についての地域的な偏りが、おこなっている漁業とどのような関係を持つのかを把握したうえで、ヒアリング調査やアンケートをおこない、実際の漁業管理の事例(管理手法や内容)について、魚種(構成)や漁業種類の特質から分析する。 漁業者の資源管理意識とその他の様々な特質との関係については、引き続き、経済実験を用いて明らかにしていく。具体的には、互酬的協力度や時間選好、リスク選好、プレゼントバイアスなどを経済実験を用いて計測すると同時に、資源管理意識に関する項目や、資源管理意識に影響を与え得るその他の項目(年齢、借入金、他)について尋ねるアンケートをおこない、これらの関係を計量経済学的手法により明らかにする。 今年度は、他の条件をできるだけ一定にし、注目する特質の影響を明確にするため、特定の地域(三重、もしくは愛知)の沿岸漁業に対象を絞り、被験者の(年齢等の)構成にも配慮しながら進める。その際、これまでの結果を踏まえて、リスク選好の実験の際にスイッチが2回起こることがある等の問題に対し、アンケートの設計を調整し、インストラクションの記述を丁寧にする(もしくはプレゼンテーションにスライドを用いる)など、工夫を加えたい。 また、予備実験として学生実験をおこなってから、その結果を踏まえて、漁業者実験を設計していく。
|