研究概要 |
RalはRas類似の低分子量GTP結合蛋白質であり、細胞の増殖や生存、小胞輸送やアクチン細胞骨格の制御など様々な機能を担っている。また、Ralは癌化にも関わっており、Ralの異常な活性化は癌化・癌悪性化に寄与することが知られている。 Ralも他のG蛋白質と同様にGTP結合型とGDP結合型の2つのコンフォメーションをとり、その活性化・不活性化はグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)・GTPase活性化蛋白質(GAP)により制御される。RalのGAPは長らく未知であったが、我々はRalGAPがα触媒サブユニットとβ共通サブユニットからなるヘテロ複合体であることを明らかにした。RalGAP複合体は総アミノ酸数3,500残基からなりゲル濾過ので分子量が1MDaを超える巨大な複合体である。本課題ではRalGAP複合体の分子構造を明らかにすることを目的とした。本年度はRalGAP複合体の構造決定に向けαサブユニットとβサブユニットの結合領域を解析し、αβの結合が複数領域からなることを明らかにした。また、Sf9昆虫細胞を用いた発現系を構築し遺伝子組み換え蛋白質の調製を行った。 浸潤性の膀胱癌ではRalGAPα2サブユニットの発現が喪失しており、RalGAPの発現低下が膀胱癌の浸潤・転移を促進することを我々は見いだしている(Saito et al., Oncogene, 2013)。RalGAP複合体の構造解析は癌の浸潤・転移を制御する上で非常に重要であると考えられる。
|