研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
25121707
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大澤 匡範 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60361606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Gタンパク質 / GIRK / NMR |
研究概要 |
G蛋白質により活性制御を受ける内向き整流性K+チャネル、GIRKは、神経細胞の興奮性や心拍数の制御などの重要な生理的役割を担っている。GIRKは、共役するGPCRおよびG蛋白質ヘテロ三量体Gαβγとシグナリング複合体を形成することで、GPCR活性化時にGαβγから解離したGβγが高効率・高選択的にGIRKに結合することを可能にしている。近年、このシグナリング複合体は、GPCRと結合したGαβγとGIRK細胞内領域との直接の相互作用により形成されていることが明らかとなってきた。また、このGαβγ-GIRK相互作用は、GIRKのGPCR非活性化時の電流Ibasalを低く抑制するprimingと呼ばれる現象を引き起こすことが知られている。そこで、本研究ではG蛋白質とGIRKの相互作用様式を以下の5点を通じて明らかにすることにより、高効率、高選択性を有するG蛋白質シグナリングの構造機構、およびG蛋白質によるGIRK機能調節(priming)機構を解明することを目的とした。(1)GαβγとGIRKの結合親和性、結合の等量関係の定量的解析 (2)NMR法による、GαβγとGIRKとの結合部位の同定 (3)結合に伴う構造変化部位の同定 (4)Gαβγ-GIRK複合体モデルの構築。(5)Gαβγ-GIRK相互作用に重要なアミノ酸残基への変異導入と、変異体の電気生理学的解析による、相互作用の生物学的意義の解明 これまでに、転移交差飽和法によりGIRK上のGαβγ結合部位を同定した。また、Gαβγ結合に伴うGIRKの構造変化部位を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画していた、GαβγとGIRKの大量調製法を確立し、Gαβγ中のGαのNMRシグナルの帰属、Gαβγ-GIRKの相互作用残基、結合に伴う構造変化部位の同定に成功した。したがって当初の計画に対して概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
GαにCys変異を導入し、スピンラベルを施すことにより、Gαβγ中のGαに近接するGIRK残基を常磁性緩和促進効果(PRE)により同定する。複数のCys部位からのPREを観測し、GαβγとGIRKの相対配置を決定する。 また、今年度明らかにしたGIRK上のGαβγ結合残基の情報とあわせ、Gαβγ-GIRK複合体モデルを構築する。 さらに、結合界面残基に変異を導入することにより、Gαβγ-GIRK相互作用がGIRKチャネル活性に及ぼす影響を評価する。これらを統合することにより、G蛋白質によるGIRKチャネル制御の構造メカニズムを解明する。
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