muオピオイド受容体を昆虫細胞に発現させて、SDS-PAGEで90%以上の純度となるまで精製した。得られたmuオピオイド受容体が、NMR測定の間リガンド結合活性を保持していることを確認した。また、得られたmuオピオイド受容体を再構成高密度リポ蛋白質の脂質二重膜中に再構成した上で、アゴニスト存在下において、G蛋白質のGDP-GTP交換およびGRKによるSer377のリン酸化を促進することを確認した。 次に、部分重水素化およびメチオニン残基選択標識を施した、界面活性剤に可溶化したmuオピオイド受容体を調製した上で、アンタゴニストおよび完全アゴニスト添加して1H-13C HMQCスペクトルを取得した。その結果、概ねオピオイド受容体のメチオニン残基数に対応するシグナルが観測された。次に、各メチオニン残基の変異体のスペクトルを取得して、変異導入前のスペクトルと比較することにより、シグナルを帰属した。 次に、部分アゴニストを添加した状態における、1H-13C HMQCスペクトルを取得した。その結果、アンタゴニスト結合状態と化学シフトが同じシグナルと、完全アゴニスト結合状態と化学シフトが同じシグナルが両方観測された。各リガンド結合状態における両シグナルの強度比が、上記のアッセイにより決定したefficacyと良く対応していたことから、オピオイド受容体が細胞内のキャビティが閉じた不活性化状態とキャビティが開いた活性化状態の構造平衡にあることが示された。
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