研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
25121713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松浦 能行 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10402413)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線結晶解析 / CRM1 |
研究概要 |
代表的な核外輸送受容体CRM1は、核外輸送シグナル(NES)をもつ輸送基質(cargo)を核から細胞質に運び出す。輸送の方向性は低分子量G蛋白質RanならびにさまざまなRan結合蛋白質群によって制御されている。輸送の最初のステップとして、まず核内でGTP結合型のRanとCRM1が協同的にNES-cargoと結合し3者複合体を形成する必要がある。私たちは、精製した蛋白質を用いた速度論解析により、この3者複合体の自発的形成反応が非常に遅いものの、主に核内に局在する酵母の蛋白質Yrb2により、CRM1へのNES-cargoの結合が、Ran-GTP存在下で著しく速くなることを見出した。私たちはさらに、Yrb2の作用機序を原子レベルで解き明かすために、核外輸送複合体形成反応中間体に相当するCRM1-Yrb2-RanGTP複合体を結晶化し、2.2オングストローム分解能で結晶構造を解いた。この結晶構造により、Yrb2が一種のアッセンブリーシャペロンのように機能し、CRM1に速やかにRanGTPをリクルートし、NES-cargoとの迅速な結合が可能な反応中間体を形成するという機構が示唆された。構造情報に基づいてYrb2やCRM1の変異体を作製し、さまざまな機能解析を行い、構造から示唆される分子機構の裏付けとなるデータを得た。この成果は、蛋白質相互作用の速度論的調節機構が細胞内輸送において果たす役割の理解を深めるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造解析、機能解析ともに、順調に成果をあげている。
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今後の研究の推進方策 |
Yrb2のヒトホモログとしてRanBP3が知られている。Yrb2の作用機序が酵母からヒトまで保存されているかどうかを検証するために、ヒトのRanBP3を用いた構造解析と機能解析を行う。また、核膜孔複合体を構成する蛋白質群とCRM1核外輸送複合体の複合体の結晶化、X線回折データ収集、構造解析を行い、核膜孔通過反応の構造基盤を明らかにすることを目指す。
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