研究実績の概要 |
出芽酵母のCRM1ホモログであるXpo1pは、核内でロイシンリッチ核外輸送シグナル(NES)をもつ積荷高分子(cargo)とGsp1p-GTP(出芽酵母のRan-GTP)と三者協調的に結合してXpo1p-cargo-Gsp1p-GTP複合体(核外輸送複合体)を形成する。核外輸送複合体はXpo1pと核膜孔複合体構成タンパク質群(nucleoporin)のFGリピートとの相互作用により核膜孔を通過した後、細胞質でYrb1p(出芽酵母のRanBP1)やRna1p(出芽酵母のRanGAP)の作用を受けて解体される。我々は速度論解析により、Xpo1pによる核外輸送を促進するcofactorとして10年以上前から知られていたYrb2p(主に核内に局在するタンパク質)がXpo1pへのGsp1p-GTPとcargoの結合を著しくスピードアップすることを明らかにした。さらに、我々はこの反応の中間体に相当するXpo1p-Yrb2p-Gsp1p-GTP三者複合体の結晶構造を2.22オングストローム分解能で解き、Xpo1p-cargo-Gsp1p-GTP核外輸送複合体の構造も高分解能(2.15オングストローム分解能)で解いた。これらの構造と、我々がこれまでに解いた他のXpo1p構造(Koyama & Matsuura, EMBO J., 2010; Saito & Matsuura, J. Mol. Biol., 2013)との比較から、Yrb2pが複合体形成の足場として核外輸送複合体の形成を加速する機構の構造基盤を明らかにした。また、Xpo1p核外輸送複合体とnucleoporin群の相互作用について理解を深める成果も得た。本成果をとりまとめて論文をCell Reports誌で発表した。
|