公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
低分子量GTP結合タンパク質Rhoの標的タンパク質であるCitronK(Citron kinase)は、細胞分裂時に分裂細胞間の細胞間橋に局在する。CitronKは、これまで、そのキナーゼ活性が細胞質分裂時に不可欠であることが報告されてきた。今回我々はCitronKの中央部分にあるCoiled-Coilが前半部分と後半部分との2つに分けられ、前半部分はKIF14との結合に、後半部分は活性型Rhoと結合に寄与し、それらが協調して機能することで、細胞質分裂遂行に機能していることを見出した。Rho標的タンパク質であり、アクチン重合タンパク質mDiaのアイソフォームの1つであるmDia2の遺伝子欠損マウスを作出し、mDia2の個体での機能について解析した。その結果、mDia2欠損マウスは、胎生期11.5日で重篤な貧血状態となり、12.5日で致死となる。mDia2の正常に分化した赤血球は一部観察されたが、胎児赤血球数は減少しており、それら細胞の中には高頻度で細胞質分裂異常による二核化細胞が観察された。この結果からmDia2は個体においても細胞質分裂を調節しており、赤血球産生に重要な役割を果たしていることが判明した(Cell Rep. 5, 926-932 (2013)。細胞内輸送に関わるRab27aGDP結合型特異的結合タンパク質としてIQGAPを同定した。IQGAPをRNAi法により枯渇させると、Rab27aやRab27a結合タンパク質coronin3の細胞膜局在が抑制された。さらに、その生理的意義を膵臓B細胞においてインスリン顆粒放出について解析したところ、これらのタンパク質の相互作用はインスリン顆粒放出以降の細胞膜回収に関わるエンドサイトーシスを調節していることが判明した(Mol. Cell. Biol 33, 4834-4843, 2013)。
2: おおむね順調に進展している
細胞生物学的アプローチによる、Rho標的タンパク質の細胞質分裂時の機能解析やその個体での役割については、当初の予想を超えて成果が得られているものと考えている。一方で、mDia2-AnillinおよびCitronK-Rho、CitronK-KIF14の複合体の精製大量精製し、結晶化を進め、これまでに微小結晶を得ており、最適化を進める一方で、再度、断片をさらに増やし、複合体の精製を試みている。一部には微小結晶が確認されており、今後、結晶化の最適化を進める。
特にmDiaに関しては他のアイソフォームでは、複数の報告からAnillin結合に相当するDID(Dia inhibitory domain)に加え、Rho結合領域を含む断片で構造決定されている経緯から、現在Rho結合領域を含む断片を用い結晶化を試みている。断片の安定性に関しては、これまで用いていた断片と変わらず良好であるという結果を得ており、結晶化をこの断片を含め検討していく予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
Cell Rep
巻: 5 ページ: 926-932
10.1016/j.celrep.2013.10.021
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巻: 13 ページ: 227-233
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Mol Cell Biol
巻: 33 ページ: 4834-4843
10.1128/MCB.00895-13