研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
25121716
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 泰久 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10415143)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ATP感受性カリウムチャネル / KATPチャネル / スルフォニルウレア受容体 / ABCタンパク質 / 膜輸送 |
研究概要 |
ATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)細胞膜上のチャネルタンパク質複合体で、インスリン分泌や虚血時の細胞の保護等、重要な役割を担う。KATPチャネルはチャネル孔を形成するKir6.2と制御サブユニットSUR1が4分子ずつ結合した構造を持ち、その分子量は800kDaに達する巨大な膜タンパク質複合体である。SUR1は多くが輸送体として機能するABCタンパク質に属することから、構造的にユニークな形状をしており、SUR1を介した制御における構造生物学的知見はほとんどない。本研究ではSUR1とKir6.2の相互作用領域に着目して研究を行った。その結果、Kir6.2とSUR1の相互作用は両タンパク質の細胞内領域を介して起こることが明らかとなった。また、チャネルの閉鎖薬やKir6.2-SUR1の相互作用を減弱させることが明らかになったことからチャネル制御がこの相互作用領域を介していることが示唆された。また、立体構造解析に向け、相互作用領域と推測される部分を大腸菌で大量発現、精製した。現在、結晶化に向けた安定化フラグメントの検討等を実施している。 また、他プロジェクトにおいてSUR1が属するABCタンパク質について、細胞膜の一部の構造が崩れていることで輸送基質が取り込まれるという興味深い結果を得ており、本プロジェクトでもこれがABCタンパク質に普遍的であるかどうかの検討を行っている。 本研究で得られた結果は両タンパク質の相互作用領域をアミノ酸レベルで推定できる初めての結果であり、KATPチャネルの開閉メカニズム制御に関して重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度においては相互作用領域の同定、およびチャネル活性を変化させる薬剤が相互作用に影響することを見出しており、当初予定したとおりに研究は進捗している。特にチャネル閉鎖薬がタンパク質の相互作用に影響するという知見は我々が始めて明らかにした現象であり、今後チャネル活性制御の全貌解明に向けて重要な一歩であると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は相互作用領域の更なる絞込み、および立体構造解析に向けたフラグメント決定を行う。安定なフラグメントが確認出来次第、結晶化実験を開始する。また、チャネル開口薬、閉鎖薬が相互作用に与える影響をさらに解析する。影響を受ける相互作用の様式を明らかにできれば、関与すると思われるアミノ酸の変異体を作成し、チャネル開閉における相互作用の重要性を立証する。また、ABCタンパク質の輸送メカニズムについて基質取り込みゲート機構の立証を行う。
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