研究実績の概要 |
本研究で達成した成果は以下のとおりである。 ・ATP感受性カリウムチャネルのヌクレオチド依存的構造変化の解析。:ATP感受性カリウムチャネルはインスリン分泌の中核を担う分子であり、細胞内のATPによって活性が制御される。本研究項目ではATP存在下、非存在下での立体構造を単粒子解析によって決定し、構造比較を行った。その結果、ATP依存的に制御サブユニットであるSUR1が約10度回転運動する事を見出した。また、同時にチャネルサブユニットであるKir6.2によって形成されるチャネル孔のサイズが大きく広がることを見出した。本研究成果はATP感受性カリウムチャネルの制御機構を考察する上で重要な知見である(投稿準備中)。 SUR1が属するABCタンパク質ファミリーはATP結合によって大きく構造変化をすると考えられているが、本研究ではSUR1のドメイン構造にATP依存的な変化を見出すことは出来なかった。チャネル開閉メカニズムの詳細を明らかにするためには更なる分解能の向上が必要である。 ・多剤排出トランスポーター(MDR1, p-glycoprotein)の輸送基質取り込みゲート機構の解析: ABCタンパク質ファミリーには癌の多剤耐性にかかわるMDR1等重要な遺伝子が存在する。本研究では多剤排出トランスポーターの基質取り込みに関与すると予想された2本の膜貫通ヘリックスに焦点を絞って解析を行った。その結果、ヒトMDR1には2つの基質取り込みゲートが存在し、輸送基質の取り込みだけでなく、輸送基質の選別にも関与していることを明らかとした。(投稿準備中)
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