研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
25121726
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
嶋田 睦 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70391977)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 葉緑体 / アクチン / 植物 / X線結晶構造解析 / タンパク質 |
研究概要 |
植物の葉緑体は強い光があたると光を避けるように細胞内を移動する.その際,葉緑体上にアクチン微繊維が形成される.アクチン微繊維ができない葉緑体は移動しないことから,葉緑体はアクチン微繊維を利用して移動すると考えられる.葉緑体上でのアクチン微繊維の形成に重要な役割を果たすタンパク質であるchloroplast unusual positioning1 (CHUP1) はC末端側に保存領域を保持している.研究代表者らは最近,この領域を含むCHUP1フラグメント (CHUP1_C_short; 757-982) の構造決定により,この領域が既知のアクチン重合促進モジュールであるFH2ドメインと類似した一部構造を保持していることを見いだした.またこの領域を含むフラグメントはアクチンと相互作用することが判明している.本研究課題はCHUP1のC末端ドメインとアクチンの複合体の立体構造を決定することにより,葉緑体上でのアクチン微繊維形成の構造的基盤の一端を解明することを目的とする.今年度はまずアクチンに結合できるCHUP1のC末端領域の最小ユニットであるCHUP1_C_long (716-982残基) の3.4オングストローム分解能での構造決定に成功した.これによりCHUP1_C_longが,N末端側αヘリックスとC末端側サブドメインの相互作用により,アクチン重合促進モジュールであるFH2ドメインと類似したフレキシブルなドーナツ型の二量体を形成してアクチンと相互作用することを示唆する結果を得た.またCHUP1_C_longが単量体型アクチンと約4 μMの解離定数で結合することを見いだした.さらにCHUP1_C_longと重合能の低下した異なるアクチン誘導体試料との複合体の結晶化を行い,複数の異なる結晶を得たが,得られた結晶は全てCHUP1_C_long単独の結晶であることが後に判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はCHUP1_C_longの構造決定に成功し,またCHUP1_C_longと単量体型アクチンの解離定数も決定するなど,今後のアクチンとの複合体の構造解析の基礎となるデータを蓄積することができた.一方,複合体の結晶化に関しては,得られた結晶が全てCHUP1_C_long単独の結晶であることが判明したため,今後複合体試料の調製において,他のアクチン試料を用いるなど,さらなる検討が必要であると考えられる.このようなことから,達成度をやや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでと同様のアプローチによる複合体結晶作製と並行して,アクチンとの結合能の上昇したCHUP1_C_long変異体のスクリーニングや,他の重合能の低下したアクチン誘導体試料の検討を行い,CHUP1とアクチンの複合体の結晶化を目指す.複合体形成に使用する他のアクチン試料として,ショウジョウバエのアクチン変異体を計画している.ショウジョウバエのアクチンは,Sf9細胞を用いたバキュロウィルスによる発現系により効率よく発現精製可能である.この系を用いることの利点は,アクチン変異体を発現精製できることである.実際これまでにこの手法で調製された重合能の低下したアクチン変異体とアクチン結合タンパク質の複合体の結晶構造が報告されている.この発現系を確立することで,CHUP1_C_longとの複合体形成に向くアクチン変異体試料が得られることが期待される.さらに植物アクチンの調製など,他の方法も検討する.次年度の交付申請書に構造決定予定と記載した新規のCHUP1とアクチン誘導体の複合体結晶に関しては,現在までにCHUP1単独の結晶であることが判明したため,この計画を除き,上記の計画を推進する予定である.
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