グラム陰性の嫌気性桿菌のA. sobriaは敗血症を起こすことが知られており、原因因子としてサチラーゼ類似のプロテアーゼ(ASP)が知られている。サブチリシン様セリンプロテアーゼ(サチラーゼ)はそのN末端に、触媒ドメインのフォールディングに必須のプロペプチドを有す。しかし、A. sobria由来のサチラーゼ(ASP)はプロペプチドを持たず、代わりに、そのすぐ下流の遺伝子によってコードされるORF2がASPの適切なフォールディングに必須であると考えられてきた。我々は今回、ORF2によるASPのフォールディング機構を解明するために、ASP-ORF2複合体の結晶構造(1.4オングストローム)および、ORF2の溶液構造を明らかにした。ORF2の構造はN末、中央、C末の3種のドメインで構成されている。WTと点変異体のORF2のシャペロンとしての機能解析とITCを用いた結合解析を行い、N末とC末ドメインは共に、ASPの適切なフォールディングに不可欠であることを示した。また、ASPのフォールディングはペリプラズムで行われること、フォールディング後はASP-ORF2複合体の状態でペリプラズムに安定に存在すること、複合体の状態で細胞外へ輸送され、細胞外で解離すること、を明らかにした。ASP/ORF2のように、プロペプチドを持たないサチラーゼとその下流の遺伝子から成るオペロンはグラム陰性菌に幅広く見られ、サチラーゼの新たなファミリーを形成していた。 TypeIII ADPRT ボツリヌス菌やセレウス菌に存在するC3 exoenzymeはRhoA Asn41をADPリボシル化し、そのシグナル伝達を阻害する。しかしながら、C3-RhoA複合体の構造は明らかでなく、その認識機構はわからなかった。この複合体の初めての結晶が得られ、データ収集とその構造解析が進んでいる。
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