研究実績の概要 |
SecDFはトランスロコン複合体において、膜を通過したペプチドをつかんでペリプラズム側に引き上げることで、淀みないペプチド輸送を可能にする。結晶解析からSecDFにはペプチド引き上げの初期状態(F型)と、後期状態(I型)の少なくとも2つの構造があることが示唆されたが、その構造変化については証明されていなかった。 高純度に精製したタンパク質を電子顕微鏡撮像し、得られた大量の画像データから単粒子解析法により3次元構造解析を行った。またHigh angle annular dark field-STEM走査透過電子顕微鏡を用いて50個のSecDFタンパク質をトモグラフィーで撮影して3次元構造決定を行った。それらを多変量解析による階層的クラスタリング分類したところ、P1Head領域の構造としては全体構造で決定されたF-formと、部分構造で見られたI-formが主要な構造状態であることが示され、統計学的手法を用いて行った単粒子構造解析の結果とも一致した。またそれらの中間と思われる構造も多数見つかったことから、SecDFは主要な2型の間で自身の構造を大きく変えることで新生ペプチドの膜透過を助けている仕組みが示唆された。またI型のみを効率よく選び出すために、Ile272とLeu422をシステイン置換したコンストラクトを用いた単粒子構造解析からはP1ヘッド構造の立った粒子像が観測され、分子内架橋によってI型構造比率を高めた試料となることがわかった。これら得られた結果を (J Struct Funct Genomics, 15, 107 (2014))に報告した。更に単粒子解析技術を広めることを目的に、一般研究者や大学院生等が広く目を通す科学雑誌に概説を記した(実験医学、32,540,2014)。
|