研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
25121746
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
熊坂 崇 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (30291066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ストレス応答 / 蛋白質複合体 / 結晶解析 / 枯草菌 |
研究概要 |
本課題では、以下の4項目について研究を計画している。a)Stressosome (RsbS/R)のシグナル分子同定と詳細構造解析による複合体形成機構の解明、b) RsbQ の基質探索とマルチドメインタンパク質RsbP の活性化機構の二つを中心課題とする。また、c) RsbTの活性化に関わるRsbU, RplM およびObg, RelA との複合体構造、d) RNA polymerase とσ因子の複合体構造解析も並行して実施する。 a)については、Stressosomeの構成蛋白質であるRsbSの回折能を有する結晶は得られているものの、位相決定には至っていない。非対称単位中に多数の分子が含まれると考えられることから、相同性の高い分子モデルを得るか、より反射強度への寄与の大きな重原子の利用が必要となっている段階にある。またこの分子に結合するシグナル分子探索として、カロリメトリー法による実験を開始し、候補分子が得られたので結晶化に反映させる試みを行っている。一方、Stressosome全体構造解明のため、バイシストロニックなRsbRS発現系の構築を進めており、大腸菌による発現を確認した。現在は精製方法の最適化を行いながら結晶化を試みている。 b)については、枯草菌中でRsbQ不活性変異体などを発現させたのちに回収することで、基質分子を同定することを目指している。この目的でd)の実験と並行して、枯草菌におけるタンパク質発現及び生成実験を進めている。これまでに、相同組み換えでアフィニティタグを染色体に導入した株を用いて、RNA polymeraseの精製、結晶化を行っており、RsbPQ発現系構築の目途が立ちつつある。c)については、RsbUの発現系の構築まで実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Stressosomeの構成蛋白質であるRsbSの結晶は最大で2.9A分解能の回折を与えるものの、位相決定には至っていない。非対称単位中に10分子程度含まれると考えられており、相同性の高い分子モデルが存在するが分子置換法での位相決定ができておらず、重原子法等を試みている。またRsbSに結合する分子探索として、カロリメトリー法による実験により候補分子が得られており、引き続き分子を絞り込む実験を行っている。 Stressosome全体構造の解明のため、バイシストロニックなRsbRS発現系の構築を行い、大腸菌による発現を確認し、精製・結晶化を試みたところ、回折能の低い結晶が得られている。現在は精製方法の最適化を行いつつ、条件のさらなる検討を行っている。 RsbP/Qについては、枯草菌によるタンパク質調製方法を確立するため、相同組み換えによるRNA polymerase調製系でのタンパク質発現及び生成実験を進めた。 RsbU, RplM およびObg, RelAについては、クローニングは行ったが、発現系の構築はRsbUに留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度として以下の二点に集中して取り組む。 1) エネルギーストレス応答系タンパク質の結晶化・シグナル分子探索:現在、枯草菌のタンパク質発現系を構築しつつあり、これによって生産させたRsbP,RsbQを回収し、結合するリガンド分子の抽出・同定を行う。この系の構築により副次的に回収できるRNA polymeraseは、ストレス応答σ因子SigBが結合するストレス応答カスケード最終段の酵素であり、重要な蛋白質であることから、その結晶化に取り組む。 2) Stressosome構成分子の結晶化・構造解析:Stressosome分子全体の高分解能構造解析に向け、回折能の高いRsbRS結晶の作成を進める。また、平成25年度より進めているRsbSに結合する核酸の同定を行い、その情報を基にしてさらに高品質な結晶の作成を試みるほか、バイオインフォマティクスを活用した分子置換法のためのサーチモデルの生成、別途開発中の低温対応のHAG法を適用して格子変換による格子内分子数の低減を試みる。
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