リン酸、カルシウムイオン濃度の代謝を制御するアルファークロトーが、タンパク質としてどのようにして機能しているのかを構造学的手法に基づきに解析してきた。本研究課題では、アルファークロトーが糖分解酵素様のドメインを2つタンデムに持つことに注目し、それぞれのドメインの共通点と異なる点から、各ドメインの生理機能を構造学的見地から理解する。 タンパク質の発現系として、ほ乳類培養細胞を用いた。具体的にはHeLa細胞、HEK293細胞、そして糖鎖修飾が限定されるHEK293(GnT1-)細胞の3種類である。また、発現させるアルファークロトーの動物種として、ヒト、マウス、ラット、そしてニワトリの4種類を採用した。それぞれのタンパク質を、発現する発現細胞株を作製し、各々(ヒト、マウス、ラット、およびニワトリのアルファークロトータンパク質)を精製し、結晶化スクリーニングを行った。 ヒトのアルファークロトータンパク質の結晶は、針状に成育し、結晶最適化の結果、約20 x 20 x 500マイクロメートルからなる結晶が得られた。しかしながら、この結晶から得られるX線回折データは、異方性を示し、その後の構造解析を行うことができなかった。 マウスとラットのアルファークロトータンパク質の結晶は、より細い針状の結晶に成育した。約2 x 2 x 300マイクロメートル以下からなる針状の結晶だったため、X線回折実験には用いることができなかった。 ニワトリのアルファークロトータンパク質の結晶は、塊状に成育した。結晶最適化の結果、約20 x 20 x 20マイクロメートルからなる正六面体の結晶が得られた。これらの結晶を用いてX線回折データを取得することができた。解析した結果、2.3オングストローム分解能での回折データを得ることができた。グリコシダーゼの構造を鋳型にした分子置換解析から、位相の解を求めることができた。
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