公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
研究代表者はこれまでにオリゴデンドロサイト細胞系譜の生理機能(脱髄軸索の再髄鞘化)が脳微小血管細胞に大きく依存していることを明らかにした。本研究はその分子実体を明らかにすると共に、血管細胞の生理機能がオリゴデンドロサイト細胞系譜に依存するか否かを検討し、依存する場合はその分子実体を明らかにすることを目的とする。平成25年度は下記の実績が得られた。1. 脱髄軸索の再髄鞘化を促進するのは血管細胞のうち内皮細胞であることを決定した。① 成体SDラット脳から脳微小血管を調製、コラーゲンコートした培養皿上でEBM培地内で培養すると、内皮細胞(ECs)とペリサイトの混合培養系が得られ、puromycinで処理するとペリサイトは死滅し、純粋なECs培養系が得られた。②EGFPトランスジェニックラットから上記①の手法で調製したECsをエンドセリン-1(ET-1)による白質梗塞モデルに移植し、脱髄軸索の再髄鞘化が促進されるか否かを検討した。すなわち、成体ラットの内包にET-1を注射、微小血管攣縮を介して内包に白質梗塞を生じさせ、1週間後にECsを梗塞部位に移植、移植2週間後に動物を屠殺して大脳を摘出、その切片を作成して再髄鞘化を評価したところ、ECs移植群の方が対照群(PBS注射群)に比べて再髄鞘化促進効果が大きかった。2. 血管細胞のターゲット細胞を同定した。脳微小血管細胞移植により脱髄軸索の再髄鞘化が促進されるのは、(1)OPCsの増殖もしくは成熟オリゴデンドロサイト(Oligos)への最終分化が促進されるため、(2)Oligosによる髄鞘化が促進されるため、の2つの可能性が考えられた。ET-1による白質梗塞モデルの脱髄巣におけるOPCs・Oligosの、数・増殖期にある細胞数・分布・形態変化を、対照群とECs移植群との間で比較したところ、ECsにより脱髄軸索の再髄鞘化が促進されるのは、OPCsへの効果によることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでのところ、ほぼ研究目的を計画通りに達成できている。
平成25年度の研究で、血管内皮細胞のターゲット細胞がオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)であることを明らかにしたので、今後は、OPCsを用いて脱髄軸索・再髄鞘化促進因子を同定する。予備実験から血管内皮細胞の培養上清がOPCsの生存・増殖を促進することが示唆されたので、培養上清中の因子の分子同定に力点を置く。成体ラット大脳から調製した微小血管内皮細胞と幼弱SDラット大脳皮質から調製したOPCsを用いて実験を行う。この際、既知のOPCs増殖因子・生存因子の中で血管内皮細胞が分泌していることが知られている分子をある程度網羅的に検討する。このアプローチがうまく行かない場合は、培養上清を濃縮した後、2D-DIGE、MALD-TOF-MSなど、生化学的手法を用いて分子同定を行う。さらに、脳微小血管内皮細胞の生理機能がオリゴデンドロサイト細胞系譜に依存するか否かを検討し、依存する場合はその分子実体を同定する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件)
Front. Cell. Neurosci.
巻: 7 ページ: 286
10.3389/fncel.2013.00286
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 441 ページ: 327-332
10.1016/j.bbrc.2013.10.046
J. Neurosci.
巻: 33 ページ: 17326-17334
10.1523/JNEUROSCI.2777-13.2013
Neurosci. Lett.
巻: 552 ページ: 15-20
10.1016/j.neulet.2013.07.021
PloS one
巻: 8 ページ: e53109
10.1371/journal.pone.0053109