公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
リンパ管と血管・神経は分布パターンや形成を調節するシグナルなど共通部分が多いが、三者の間の相互作用を司る分子機構については未解明な部分が多く残されており、それを解明することが本申請課題の目的である。平成25年度は下記の研究成果を得た。(1) リンパ管の形成におけるTGF-βファミリーシグナルの役割の検討:リンパ管の形成に対してTGF-βファミリーメンバーである骨形成因子(BMP9)が抑制的に機能することを、BMP9遺伝子欠損マウスやその受容体(ALK1)遺伝子欠損マウスなどを用いて詳細に解析し、PNAS誌において発表した。(2) 中枢神経系における新規リンパ管形成抑制因子の探索:今回この課題における進展はなかった。(3) リンパ管系が血管系と神経系のワイヤリングに与える効果の検討:以前BMP9遺伝子欠損マウスにおいてリンパ管の形成が亢進することを見出したが、今年度はその受容体(ALK1)遺伝子欠損マウスにおける解析を行い、やはりリンパ管形成が亢進することを見出した。現在血管や神経における表現型を解析中である。以上の研究成果はリンパ管の形成機構をより詳細に解明することにより、リンパ性浮腫やがんリンパ節転移の治療につながるという点で意義は大きいとともに、未解明の部分が多いリンパ管と神経との相互作用の理解に向けて進展があったという点で本領域へ貢献したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本申請課題においては(1) リンパ管の形成におけるTGF-βファミリーシグナルの役割の検討、(2) 中枢神経系における新規リンパ管形成抑制因子の探索、(3) リンパ管系が血管系と神経系のワイヤリングに与える効果の検討、の3つの課題を遂行中であるが、従来の計画で、平成25年度において(1)を完成させる予定であった。その点では論文が発表できたということは十分満足な達成度であると考えている。また(3)についても(1)において用いた複数の遺伝子欠損マウスにおけるリンパ管の表現型を解析できたという点で着実な進展が見られた。(2)の「中枢神経系における新規リンパ管形成抑制因子の探索」は比較的萌芽的なプロジェクトであり、今年度は大きな進展は得られなかったが、(1)で得られた知見や、(3)で用いた遺伝子欠損マウスがこれからの課題遂行に役立つことが期待される。以上を総合して考えて、本申請課題は「おおむね順調に進展している」と考える。
(1) リンパ管の形成におけるTGF-βファミリーシグナルの役割の検討:これまでの成果としてTGF-βファミリーメンバーであるBMP9がリンパ管の形成に対して抑制的に機能することが明らかとなったので、これからは他のメンバーに関して、受容体遺伝子欠損マウスなどを用いて詳細に解析する予定である。(2) 中枢神経系における新規リンパ管形成抑制因子の探索:中枢神経においてBMP9や他のTGF-βファミリーメンバーなどのリンパ管形成を調節する因子の発現が見出されるかどうか検討する予定である。(3) リンパ管系が血管系と神経系のワイヤリングに与える効果の検討:BMP9遺伝子欠損マウスやその受容体(ALK1)遺伝子欠損マウスにおいて血管や神経における表現型を解析する予定である。
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Biochemical Journal
巻: 452 ページ: 345-357
10.1042/BJ20121200
Proceedings of the National Academy of Sciences of U.S.A.
巻: 110 ページ: 18940-18945
10.1073/pnas.1310479110