公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
膵臓のランゲルハンス島(膵島)は、インスリンやグルカゴンを刻々と変化する血中ブドウ糖濃度に応じて速やかに分泌するために、血流に富み、また自律神経入力を受けている。本研究課題では研究代表者が作成したグルカゴン遺伝子-GFPノックインマウスを主な研究材料として、膵島へのinnervation/ vascularizationの成立過程と、同マウスのホモ接合体であるグルカゴン遺伝子欠損マウス(GCGKO)におけるGFP陽性α細胞の過形成に伴う、血管・神経の形態異常の発症機構を解析、その制御機構を明らかとすることを目的とする。これまでに、GCGKOの膵島では血管密度および神経終末が減少していることが明らかとし、またこの異常の発症時期を特定するために胎生期から新生児期にかけての膵島形成における血管およびその基底膜、また神経の分布を解析してきた。Ki67の発現を指標として解析した場合、対照群では生後α細胞の増殖をほとんど認めない一方、GCGKOでは生後も増殖が継続していた。そこでα細胞の増殖とinnervation/ vascularizationの制御機構が不可分である可能性が高いと判断し、α細胞の増殖制御機構の責任分子の探索を、血管・神経系の形態学的解析と並行して進めている。一方、12ヶ月齢を越えるGCGKO個体の膵臓においては高い確率で神経内分泌腫瘍が発生し、腫瘍内の血管形態は正常の血管と異なることから、この腫瘍細胞が血管の形態を制御する因子を発現する可能性を考慮して、この腫瘍の遺伝子発現プロファイルデータを取得した。現在、神経内分泌腫瘍由来細胞の培養条件の最適化・細胞株化を進めているが、このアプローチにより、α細胞の増殖制御機構の責任分子の同定とinnervation/ vascularizationの制御機構が明らかにされることを期待している。
3: やや遅れている
本研究計画は膵臓のランゲルハンス島(膵島)における血管系、神経系の形成とその制御機構を明らかとすることを目的としてスタートした。主な研究材料としてグルカゴン遺伝子欠損マウス(GCGKO)を用い、これまでに胎生期から出生にいたるまでの膵島・血管・神経の形態解析からグルカゴン遺伝子に由来するペプチドが、胎生期における血管・神経の発達に必須ではないことを明らかとするとともに、膵島形成過程の血管と基底膜の構造を明らかとすることにある程度成功している。しかしながら、その制御機構の解明において当初想定していた器官培養系からは安定したデータが得難いことから、このアプローチは断念することとなり、当初の想定より遅れを生じた。しかしながら、α細胞の増殖とinnervation/ vascularizationの制御機構が不可分である可能性が高いと考えられる。そのため、スクリーニング系や解析アプローチがより容易なα細胞増殖制御機構の解明を先行することにより、innervation/ vascularizationの制御機構の解明に結びつけられると期待し、現在達成度の遅れを克服する過程にあると考えている。
GCGKOにおけるα細胞過形成の促進メカニズムを明らかとするために、GCGKOの過形成膵島または腫瘍化した組織片をGCGKOおよび対照群の腎臓被膜下に移植し、GCGKOにおける液性環境がα細胞の増殖を促進することを確認する。なお、GCGKOが正常血糖値を示すため、ブドウ糖濃度がα細胞の過形成の促進因子ではないと考えている。α細胞増殖制御因子/抑制因子の候補の抽出を目的としてグルカゴンの主要標的臓器である肝臓の遺伝子発現プロファイル解析を行っており、GCGKOにおいて特異的に、発現が増加/減少している因子が、それぞれ増殖促進/抑制因子の候補と考えている。また、これらの因子は膵島へのinnervation/ vascularizationに対する制御作用を示す可能性がある。そこで、α細胞の過形成がはじめる出生直後から生後一週間の時期に重点をおいて、肝臓の遺伝子発現解析とα細胞の過形成の過程・血管・神経の形成過程を解析する。一方、腫瘍化した組織から細胞を数週間培養する条件を見いだしたため、この培養系における細胞増殖を指標として、α細胞増殖制御因子/抑制因子のスクリーニングを行う。これらの実験は平成26年度の前半に結果が得られる見込みである。平成26年度後半は、増殖制御候補因子を過剰発現あるいは発現阻害する組換えアデノウイルスの投与実験により、この因子が動物個体においてもα細胞の増殖制御に関わることを確認する。また、トランスジェニックマウスやcrispr/casシステムによる当該因子欠損マウスを作成を進め、GFPノックインマウス(Gcg-gfp/+)と交配、α細胞の増殖と膵島へのinnervation/ vascularizationに及ぼす影響を解析する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件)
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