網膜における血管―神経相互依存性破綻モデルを用いた薬効評価系を確立して、血管―神経相互依存性破綻の予防法・回復法を見出すことを目的として、本年度は、新生仔期ラットを用いた検討を行い、次のような成果を得た。 1.網膜における血管―神経相互依存性について検討するために、7日齢のラットにVEGF受容体阻害薬を2日間投与し、その後の網膜血管形成の様子を35日齢まで観察した。処置ラットでは、速やかに網膜の血管新生と毛細血管の脱落が生じた。11日齢時から血管新生が再開し、14日齢では中心動脈の蛇行と非常に密な血管網が認められるようになった。これらの血管異常は 21日齢で更に悪化したが、28日齢以降は正常化に向かった。観察期間の35日齢まででは網膜神経の組織学的変化は認められなかった。処置ラット14日齢時の網膜ではVEGF発現が上昇しており、血管内皮細胞における2型VEGF受容体発現が亢進していた。異常血管形成はVEGFR阻害薬を投与すること、ならびにNMDA硝子体内投与により著しく視神経節細胞を脱落させることにより全く観察されなくなった。新生仔期ラットにおける異常血管形成に、視神経節細胞由来の VEGF が重要な役割を演じている可能性が示唆された。 2. 血管―神経相互依存性破綻の予防法・回復法については、NMDA硝子体内投与後に生じる網膜の神経と血管の変化に対するMMP阻害薬の効果を検討した。MMP阻害薬は、神経傷害に対しては、影響を及ぼさないものの、血管傷害を有意に抑制した。従って、網膜神経傷害後に生じる血管傷害にはMMPが関与していることが示唆された。MMPの活性調節が血管―神経相互依存性破綻の悪循環を回避するための手段になり得る可能性が示された。
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