研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
25122714
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
菅田 浩司 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60508597)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 血液脳関門 / BBB / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
血液脳関門(BBB)の本体は脳内毛細血管の血管内皮細胞である。BBB は内皮細胞そのものの損傷はもちろんのこと、血管外の病変でもその強度が低下することが知られている。また、進化的には脊椎動物であってもある種のサメやエイでは BBB のバリア機構を担うのは内皮細胞ではなく周囲のグリアである。昆虫や頭足動物ではそもそも血管を持たないが、グリアがバリアとして機能する事が知られている。つまり、BBB の機能は血管の有無にかかわらず本質的には多くの生物が有していると考えられる。 ショウジョウバエの BBB は「グリア型」である。しかし、その機能を担う分子やシグナル伝達経路の多くは進化的に保存されていることから、BBB の解析を行う上で優れたモデル系である。 これまでにショウジョウバエを用いた in vivo RNAi スクリーニングによって、BBB の形成と維持に関わる分子の同定を試みた。dsRNA のオフターゲット効果を除くための2次スクリーニングや、機能欠失型変異体を用いた絞り込みを行った結果、進化的に保存された膜タンパク質を得た。我々の解析手法を用いれば、成虫の腹腔に蛍光標識したトレーサーを微量注入し、蛍光実体顕微鏡下で中枢への侵入を観察することで、個体が生きたまま BBB 機能を解析することができる。しかし、今回見出した遺伝子の機能欠失型変異体は成虫以前に致死となるため、新たな解析手段が必要である。そこで BBB 形成直後の後期胚にトレーサーを注入し、BBB 機能を解析する手法を樹立した。本法を用いた解析の結果、変異体では、トレーサーは受動拡散の様式で中枢神経系内に浸潤することが明らかとなった。さらに、遺伝学的手法を用いて BBB を形成する細胞に特異的に原因遺伝子の cDNA を強制発現させると表現型がレスキューできることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で得た系統について解析が進んでいるため。また、スクリーニングではこれまでに報告されていないタイプの表現型を示す系統も新たに得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
目的遺伝子の機能解析を行う。また、この遺伝子の下流シグナル伝達経路を特定し、目的遺伝子が関与する BBB の制御機構について全容を明らかにしたい。
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