公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
交感神経の活性化は末梢血管抵抗を亢進させ血圧を調節するだけでなく、骨髄において造血幹細胞の末梢血液中への供給に関与するなど多くの生理機能を調節している。「笑いが免疫力を高める」や「病は気から」といわれているように、気分が落ち込むとノルアドレナリンが分泌され交感神経を活性化し体に変調をきたす。特に癌における神経活動の関与は前立腺がんなど一部の癌を除いてその関連が明らかとなっていない。本研究では特に交感神経の活性化と血行性転移に着目し、血管と神経の機能的な連関関係を明らかにすることを目的とする。悪性新生物は新生物と表現されているが血液、血管、免疫担当細胞などが存在しヒトの体を形成する他の臓器や組織と同等にとらえることができる。マウス皮下に腫瘍を移植し担癌マウスを作成し原発巣の解析を行った。その結果、乳がん細胞E0771、肺がん細胞LLCおよび3LLなど複数の腫瘍において神経および神経活動の存在が確認された。また、低転移腫瘍LLCと高転移腫瘍3LLにおける交感神経の活性化を検討したところ、低転移腫瘍と比較して高転移腫瘍において交感神経の活性化が亢進していることが明らかとなり、交感神経の活性化の転移への関与を示唆する実験結果を得た。また、カテコールアミン作動性神経を選択的かつ可逆的に消失させるために6-OHDAをマウスに投与し転移における交感神経活動の機能を検討した。その結果、6-OHDA投与群で肺転移の阻害効果が確認された。今後、肺転移における交感神経の詳細な分子機構を解明し、癌治療における神経活動の重要性を明らかにしたい。
2: おおむね順調に進展している
肺転移モデルの担癌マウスを用いた実験により肺転移における交感神経活動の重要な機能を示唆する実験結果を得られ今後の発展が期待できるため。
肺転移における血管と神経の連関関係を明らかにし、他の疾患においても同様の血管と神経の関係を明らかにしていく。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
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