公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
モヤモヤ病は我が国に多い脳血管疾患で、内頸動脈分岐部での血管の狭窄・閉塞、側副血行路の形成とそこからの出血等を特徴とする。モヤモヤ病患者の遺伝解析から、新規遺伝子ミステリンのミスセンス変異がモヤモヤ病罹患リスクを著しく上昇させることが明らかとなっていたが、ミステリン遺伝子の機能とミスセンス変異による分子・細胞レベルでの影響については不明であった。我々はミステリンの生理機能の理解を進める目的で、全長ミステリンタンパク質を精製し、構造・活性解析を行った。その結果、ミステリンが新規のタンデム型AAA+ ATPアーゼであり、巨大なドーナツ状構造を形成して、ATPの加水分解と共役したメカニカルな活性を持つことを見いだした。ミステリンの2つのAAA+ ATPアーゼは、それぞれ独立したATPアーゼ活性を示し、これらのATPアーゼモチーフ上でのATP結合・加水分解サイクルによって、ミステリンのドーナツ状複合体状態や構造が制御されていた。この結果から、ミステリンは特異なメカノエンザイム/ユビキチンリガーゼとしてはたらき、細胞内物理過程を通じて個体における血管発生に寄与していることが考えられた。また、ミステリンは血管に限らず、調べられた全ての組織にユビキタスに発現しており、個体レベルの解析からはミステリンが血管発生以外の現象に寄与する結果が示唆されている。血管・神経を含む多組織での機能についても検討を継続する。
2: おおむね順調に進展している
当初予定の研究を進め、その一部を論文として発表した。残りの部分についても研究を進めると共に、論文発表の準備を進めている。
これまでの研究からミステリンの酵素活性についてほぼ明らかにすることができた。細胞内機能・個体機能とこの酵素活性の相関を調べることが急務であり、培養細胞、モデル生物における酵素活性変異体の振る舞いの検討等を通して、この問題を解決していく。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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Biochem Biophys Res Commun.
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