研究概要 |
前度に引き続き、マウス発生期(E13,E15, E17, P0, P7, P30の各時点)における大脳皮質血管の形成状態を観察し、脳血管アトラスを作成した。この結果を現在原著論文にまとめており、近日中に投稿予定である。 また、大脳皮質形成障害のモデルマウスを用いて、神経組織の形成障害が血管ネットワーク形成に及ぼす影響を解析した。脳血管形成機構を追求し、発生期マウスの大脳皮質形成と血管形成の相互連関の実態の一端を明らかにした。具体的には、大脳皮質の層構造は正常であるが皮質自体が発育不全になる大脳皮質形成障害モデル(SIP1-cKOマウス)の解析を行った。このKOマウスにTamoxifenを投与すると大脳皮質形成不全がおこる。このとき、脳室近傍の血管網に大きな乱れが生じることを確認した。この結果は、発生期の大脳皮質形成と血管ネットワーク形成が協調的に進行することを示唆している。現在、SIP1の発現抑制の程度や発現抑制のタイミングがどのように血管ネットワーク形成に影響を及ぼすのかについて、さらなる解析を継続している。さらに、大脳皮質形成に必須の役割を果たす低分子量G蛋白質Rap1のKOマウスを作出してコロニー形成に成功した。現在までに基礎的な解析に着手することが出来た。 一方、本年度は、大脳皮質形成の際のアストロサイトの移動に血管ネットワークが果たす役割りにも着目して研究を行った。その結果、脳室近傍で生まれたアストロサイトは、大脳皮質内をランダムな経路をとりながら移動する際に、血管を足場として利用する場合があることを見出した。
|