公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では胎生期大脳皮質サブプレート(SP)に存在する長連合ニューロンの標識・操作を通じてその長連合回路の形成における役割を解析する。我々はこれまでにマイクロアレイ解析とin situハイブリダイゼーション解析などを通じて、ctgf遺伝子が大脳皮質6b層(元々SPだった層)の長連合ニューロンに発現することを見出していた。平成25年度は、まず、GENSATより購入したctgf遺伝子座にEGFP遺伝子が導入された全長160kbのBACクローンから、大腸菌内相同性組換えにより転写開始点上流10.4kbおよびEGFPをプラスミドに落としてP(ctgf)-EGFPを作製した。これをSPニューロンが誕生する胎生11.5日目(E11.5)にin utero electroporation (IUE)で導入し、SP長連合ニューロンのEGFPによる標識を試みた。しかし、様々な試行錯誤を行ったものの、これまでEGFP陽性のSPニューロンを認めるに至っていない。現在、異なる長さの上流領域を持つコンストラクトを準備するとともに、マイクロアレイで得られた6b層に発現する他の遺伝子についてもそのプロモータを利用する準備を進めている。一方、ctgf陽性SPニューロンを選択的に除去する実験に用いるデュアルドライバーマウス作製のため、今年度は、上記BACクローンをctgfプロモータ下流にCreERT2とrtTAを持つように改変した。また、ctgf陽性SPニューロンを除去したマウスの長連合回路を観察のため、CLARITYおよびSeeDBによる脳組織透明化条件の検討を行い、IUEにより2/3層の長連合ニューロンが標識された脳組織を十分に透明化することができた。
2: おおむね順調に進展している
胎生11日目のin utero electroporationは技術的にかなり困難で習熟に時間を要することに加え、プロモータ領域が適切かどうかは実際にレポーターをニューロンに導入してみなければわからず、その判定に時間を要したが、これは予想された範囲内であり、対応策も適切に行って概ねカバーできている。
平成25年度に作製した改変BACクローンを用いてトランスジェニックマウス(デュアルドライバーマウス)の作製を始める。これが得られたらニューロン特異的かつCreによる組換え依存的にジフテリア毒素蛋白を発現するマウス(理研バイオリソースセンターから導入予定)と掛け合わせてctgf陽性SPニューロン欠失マウスを作製する。SPが形成される胎生11日目にtamoxyfenを投与して組換えを誘導し、DTAによってctgf陽性細胞を除去する。その後、胎生13日目あるいは15日目にin utero electroporation (IUE)を行って、2/3層あるいは5層の長連合ニューロンを可視化し、その軸索の進展の様子を経時的にサンプリングして観察する。観察の際には摘出した脳組織の大脳皮質を平板化・透明化して全体像をイメージング、さらに標識された各ニューロンの軸索を1本ずつトレースする。同様にJackson Laboratoryから破傷風毒素蛋白の発現を薬剤で誘導できるマウス系統を導入してデュアルドライバーマウスと掛け合わせ、IUEで皮質板内の長連合ニューロンを標識した後、ドキシサイクリンを投与する。投与時間を変化させることでctgf陽性SPニューロン神経活動を抑制するタイミングを変え、その長連合回路形成への影響を解析する。また成体で神経活動を抑制して、6b層長連合ニューロンの成体における機能についての解析を行う。Ctgfプロモータで狙った効果が得られない場合に備えて、別のプロモータに関しても並行してドライバーマウスの作製を行う。
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Sci Rep.
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