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2013 年度 実績報告書

生体内での軸索形成機構の解明

公募研究

研究領域神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築
研究課題/領域番号 25123705
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関名古屋大学

研究代表者

貝淵 弘三  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00169377)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード神経科学 / 発生・分化
研究概要

神経細胞は高度に極性化した細胞であり、通常1本の軸索と複数の樹状突起を形成する。現在までに、我々を初めとする複数のグループが培養神経細胞の軸索形成を制御する細胞内外のシグナル伝達経路を明らかにしてきた。しかしながら、生体内でどのような細胞内外のシグナルが軸索を決定しているのかは未だ不明のままである。本研究課題では、発生期の大脳新皮質興奮性神経細胞をモデルとし、生体内での軸索形成を制御する細胞内外のシグナルネットワークを包括的に明らかにすることを目的とする。
我々は生体内で神経細胞が極性を獲得する過程を可視化し、多極性細胞の未熟な突起が早生まれの神経細胞の軸索に接触することによって、神経突起から軸索への変化を誘導することを見出した。この結果を踏まえ、様々な接着分子の関与を検討したところ、TAG-1の遺伝子発現抑制が生体内の軸索形成を阻害することが判った。さらに、我々はTAG-1依存的な細胞間相互作用が細胞内でSrcファミリーキナーゼLynを介したRac1の活性化を誘導し、軸索伸長を制御していることを明らかにした(Namba et al., Neuron, 2014)。
また、我々はPar3の新規結合蛋白質としてリン酸化酵素Erkを同定した。ErkによるPar3のリン酸化の意義について検討したところ、リン酸化Par3はKIF3との結合能が低下することが判った。さらに、我々は生体内において神経細胞の極性形成がErkによるPar3のリン酸化によって制御されていることを明らかにした(Funahashi et al., J Neurosci, 2013)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通りに生体内での軸索形成機構を制御する分子機序を明らかにしつつある。我々は、未成熟な神経細胞と既に熟した神経細胞の軸索であるパイオニア軸索との間に免疫グロブリン様の細胞接着因子であるTAG-1を介した細胞間相互作用があり、これが軸索の形成を制御していることを明らかにした。さらに、我々はTAG-1の下流でどのような細胞内シグナルが軸索形成に関与しているのか検討したところ、SrcファミリーキナーゼLynを介してRac1が活性化されることが判った。これらの結果から、生体内において神経細胞はTAG-1依存的な局所情報をもとに、Lyn-Rac1経路を介して軸索が形成されることが示された。また、我々はPar3がリン酸化酵素Erkの基質であることを見出した。Par3は軸索遠位部でErkによってリン酸化されること、このリン酸化が軸索遠位部でのPar3の濃縮に必要であることが判った。また、生体内での軸索形成がPar3遺伝子発現抑制により阻害され、この効果はPar3のリン酸化型変異体ではレスキューされないことから、生体内においてErkによるPar3のリン酸化は神経細胞の極性形成を制御していることが示された。我々は、N-cadherinを介した放射状グリア細胞との細胞間相互作用によって神経細胞の軸索形成が抑制されるという結果も既に得ており、生体内の軸索形成機構を制御する分子ネットワークの解析の理解が進みつつある。

今後の研究の推進方策

本年度は、主に生体内での軸索形成に関与するネガティブシグナルの解析を行う。我々は、培養条件下でN-cadherinを介した放射状グリア細胞との細胞間接着により、神経細胞の軸索形成が抑制されることを既に見出している。そこで、生体内での軸索形成に対するN-cadherinの役割を子宮内エレクトロポレーション法、切片培養法を用いて解析する。さらに、その下流シグナルを明らかにするために、薬理学的および遺伝子工学的解析を行う。また、生体内では細胞接着因子の他に神経栄養因子や液性因子なども軸索形成に関与していることが示唆されている。我々は単一の突起にのみ刺激する局所刺激法を用いて、これらの細胞外因子を伸長中の軸索のみに刺激したところ、未成熟な神経突起が退縮するという予備的知見を得ている。この結果は、軸索から発生する何らかのネガティブシグナルが未成熟な神経突起の軸索への分化を阻害し、複数の軸索形成が抑制されていることを示している。今後は、未成熟な突起で軸索への分化を抑制している分子を、各種阻害剤を用いた局所刺激法で同定する。また、蛍光プローブを用いた局所刺激法により、軸索から発生すると考えられるネガティブシグナルを明らかにする。同定したシグナル伝達経路が、生体内でも同様に極性形成を制御しているかどうか検証するために、子宮内エレクトロポレーション法を用いた機能解析実験を行う。さらに、シグナル分子の蛍光タンパク結合分子やFRET (蛍光共鳴エネルギー転移)プローブを用いて、それぞれの挙動を観察することで局在や活性化制御機構を時空間的に解析する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Pioneering axons regulate neuronal polarization in the developing cerebral cortex2014

    • 著者名/発表者名
      Namba, T., Kibe, Y., Funahashi, Y., Nakamuta, S., Takano, T., Ueno, T., Shimada, A., Kozawa, S., Okamoto, M., Shimoda, Y., Oda, K., Wada, Y., Masuda, T., Sakakibara, A., Igarashi, M., Miyata, T., Faivre-Sarrailh, C., Takeuchi, K., and Kaibuchi, K.
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 81 ページ: 814-829

    • DOI

      10.1016/j.neuron.2013.12.015.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ERK2-mediated phosphorylation of Par3 regulates neuronal polarization2013

    • 著者名/発表者名
      Funahashi, Y., Namba, T., Fujisue, S., Itoh, N., Nakamuta, S., Kato, K., Shimada, A., Xu, C., Shan, W., Nishioka, T., and Kaibuchi, K.
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience

      巻: 33 ページ: 13270-13285

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.4210-12.2013.

    • 査読あり
  • [学会発表] Neuronal polarity in vitro and in vivo

    • 著者名/発表者名
      Kaibuchi K
    • 学会等名
      International Symposium Neocortical Organization 2
    • 発表場所
      岡崎カンファレンスセンター (岡崎市)
    • 招待講演
  • [学会発表] Neuronal polarity in vitro and in vivo

    • 著者名/発表者名
      Kaibuchi K
    • 学会等名
      ASCB2013
    • 発表場所
      New orleans, USA
    • 招待講演
  • [備考] Dept of Cell Pharmacology

    • URL

      http://www.med.nagoya-u.ac.jp/Yakuri/

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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